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スリランカ

スリランカで準独裁体制が復活すれば、海洋覇権を狙う中国を利するだけ

GOOD NEWS FOR CHINA?

2019年10月30日(水)17時45分
ブラマ・チェラニ(インド政策研究センター教授)

ゴタバヤ陣営は、中国との「関係回復」も明言している。世界で最も混雑したシーレーンに隣接するスリランカの戦略的位置を考えると、その影響は国内にとどまらない。実際、スリランカは中国とインド太平洋地域の民主主義陣営(インド、アメリカ、日本、オーストラリア)との海洋覇権をめぐる争いで決定的に重要な役割を果たす可能性がある。

中国の「真珠の首飾り」戦略は、インド洋の主要航路沿いに軍事・商業上の重要拠点を確保することで、インドを包囲するというものだ。習近平(シー・チンピン)国家主席は、ハンバントタ港を「21世紀の海のシルクロード」構想の要と呼んでいる。

習の「一帯一路」戦略に対する国際的な懸念が強まっている今、ラジャパクサ一族の政権復帰はスリランカを軍事的な前哨基地にしたい中国にとって歓迎すべきニュースだ。しかし、それ以外のほとんど全員にとっては悪いニュースだ。

「ゴタバヤ大統領」は兄の政権の犠牲者に対する法的救済を阻止し、民族・宗教間の分断を広げ、インド太平洋における中国の覇権を後押しするだろう。スリランカの民主主義はかつてなく脆弱に見える。

©Project Syndicate

<本誌2019年11月5日号掲載>

【参考記事】謎多きスリランカ同時多発テロ──疑問だらけの事件を振り返る
【参考記事】スリランカは「右傾化する世界の縮図」―ヘイトスピーチ規制の遅れが招いた非常事態宣言

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