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シリア

アメリカに見捨てられたISIS掃討戦の英雄たち

After ISIS

2019年7月12日(金)11時48分
ケネス・ローゼン(ジャーナリスト)

ISISはさらに過激化

だがISISは平気で手を出してくるだろう。米軍の幹部も、ISISはシリアで領土を失ったが形を変えて生き延びていると警告している。

「いま私たちが目にしているのは、組織としてのISISの降伏ではない。むしろ家族の安全を図り、戦闘能力を温存するという計算に基づく個別的な退却だ」とジョゼフ・ボテル中央軍司令官は語っている。「ISISは『カリフ国』の支配地域から撤退したが、その戦闘員の大部分は悔い改めることも、打ちひしがれることもなく、一段と過激化している」

筆者がシリアに入る前の1月16日にも、アメリカ人4人(米兵2人と国防総省職員を含む)がマンビジにある欧米人に人気のレストラン前で、自爆テロにより殺害。16人もの民間人も犠牲になった。マンビジには4年以上前からISISはいないとされてきたのだが、ISISのメンバーが犯行声明を出した。

爆破されたレストランは1週間足らずで営業を再開した。アブ・オマル(30)は、近くの店先でその様子を見ていた。「あれはテロリストの仕業だ。そして私たちを守り、私たちのために戦うはずのアメリカ人を傷つけた以上に、私たちとこの町を傷つけた」と彼は言う。「私たちは、人間が尊厳を持って生きることができるまともな生活をしたいだけだ。自爆テロで子供が殺されることのない静かな生活をしたいだけだ」

<本誌2019年4月16日号掲載>

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