最新記事

米中貿易

鍵を握るのは日本か――世界両極化

2019年5月13日(月)12時50分
遠藤誉(筑波大学名誉教授、理学博士)

指先(ツイッター)だけで世界を変えるトランプ大統領 Jonathan Ernst-REUTERS

5月10日夜、中国の劉鶴副首相が中国メディアの共同インタビューに応じ、米中通商交渉の内部を初めて明かしたが、米国が中国からの輸入品全てに25%の関税をかけた場合、世界は両極化することが読み取れる。

劉鶴副首相のインタビュー

米中通商交渉の中国側トップである劉鶴副首相は、5月10日夜、ワシントンで中国メディアに対する共同インタビューを受け、日本時間11日の朝方に一斉に報道された。たとえば「新華網」「鳳凰網」などで、肉声を聞くことができる。新華網は編集をしたのだろう、時間的には少し遅れている。

それ等によれば、劉鶴副首相はトランプ大統領が「中国が合意文書を撤回した」と言ったということに対する反論を次のように述べている。

「一般に、文書表現を詰めていくときには、互いにどういう表現がいいかということを、発表寸前まで推敲して話し合うものだ。米国が事前に一方的に感じた感触をトランプに報告し、その感触と双方の調整がずれたからといって、『中国が合意文書案を撤回した』と非難するのは適切ではない。騒ぎ立てるほどの問題ではなく、正常な協議プロセスだ」

これを見る限り、われわれ誰でも文書を公開する場合は、寸前まで推敲を重ねるわけだから、その推敲過程であったように思われる。

次に米中は基本的にコンセンサスを得て協議は友好的で有意義だったが、次の3点において合意に至っていないと劉鶴は述べている。

これは初めてメディアに公開するとのことなので、非常に興味深い。

一点目:米中貿易摩擦の発端は米国が中国に関税をかけてきたことにある。したがって合意に達するためには、追加関税を全廃しなければならない。

二点目:(昨年12月)アルゼンチンにおける米中首脳会談の際に双方は中国側の米国からの輸入拡大の数値に関して話し合いコンセンサスを得た。中国側はこの数値目標を厳粛に受け止めている。(それを米側が変えようとしているが)コンセンサスに達した数値目標を簡単に変えるべきではない。

三点目:どの国にも国家の尊厳というものがある。互いの国家を尊重した、バランスの取れた表現にしなければならない。

日本の報道では「中国が5月上旬、米企業に対する知的財産権や技術移転強制などを禁じる法整備の約束を撤回して、合意案の修正を求めた」とあるが、「技術移転強制禁止」に関しては今年3月の全人代でその法律は「外商投資法」として制定されているので、この報道は正確性を欠く。 

筆者が最も注目したのは「一点目」だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=下落、AI支出増でメタ・マイクロソフ

ビジネス

米アップル、7─9月期売上高と1株利益が予想上回る

ビジネス

アマゾン、売上高見通し予想上回る クラウド好調で株

ビジネス

NY外為市場=円が対ドルで154円台に下落、日米中
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面に ロシア軍が8倍の主力部隊を投入
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 9
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 10
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 10
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中