最新記事

北朝鮮

スペインの北朝鮮大使館を襲撃、臨時政府樹立を宣言した「自由朝鮮」とは?

2019年3月31日(日)18時45分

スペインの首都マドリードで2月に起きた北朝鮮大使館襲撃事件の詳細が判明するとともに、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が率いる体制の打倒を目指す組織「自由朝鮮」の存在が注目を浴びるようになってきた。マドリードにある北朝鮮大使館で2月撮影(2019年 ロイター/Sergio Perez)

スペインの首都マドリードで2月に起きた北朝鮮大使館襲撃事件の詳細が判明するとともに、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が率いる体制の打倒を目指す組織「自由朝鮮」の存在が注目を浴びるようになってきた。

自由朝鮮の存在は、2017年にマレーシアで殺害された金正男氏の家族を保護したと宣言した際に初めて明らかになった。

スペイン当局が26日に公表した裁判所の記録によると、その自由朝鮮のメンバー少なくとも10人がマドリードの北朝鮮大使館に押し入り、数時間にわたって一部大使館員を拘束するなどした後、コンピューターとハードディスクドライブを持って逃走したもようだ。

自由朝鮮はウェブサイトで大使館侵入を認めた上で、武器を持ち暴力をふるったというスペイン当局の説明は間違っていると主張。代理人の弁護士は、スペインの裁判所が自由朝鮮側の言い分を聞かずに「結論を下したと称している」と指摘した。

さらにスペイン側が一部侵入者の氏名などを公表したことについて「常に敵を処刑する残忍な体制に反対する活動をしている人々の名を公開するのは非常に無責任だ」と批判している。

公表されたのは侵入した10人のうちの7人の氏名と誕生日。専門家や人権団体などからは、この7人は命が脅かされるとの懸念が出ている。

侵入者の1人と以前、ともに運動したというある韓国の人権活動家は「あまりに危険だ。彼らの素性が知れてしまった以上、これまでのような活動はできなくなる」と話した。

長年の活動家

メキシコ国籍を持ち、スペイン当局から事件の首謀者の1人と名指しされたのはエイドリアン・ホン氏だ。同氏は脱北者支援団体「リバティー・イン・ノースコリア(LiNK)」の設立に尽力し、その後北朝鮮の「差し迫った劇的変化」に備える組織を率いた長年の活動家として知られる。

スペインの裁判所の記録によると、ホン氏は北朝鮮大使館襲撃を指揮し、米国に渡って連邦捜査局(FBI)に盗み出した情報を提供したという。

ホン氏は他の数人のLiNKメンバーとともに06年、北朝鮮からの亡命者グループを支援したとして中国当局が逮捕し、国外退去処分を科した。

ただLiNKは26日の声明で、ホン氏とはもう10年余り関わりがないとした上で、LiNKには同氏の現在の活動に関する情報は何もないと付け加えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ前米大統領、麻生自民副総裁と会談=関係者

ワールド

北朝鮮「圧倒的な軍事力構築継続へ」、金与正氏が米韓

ビジネス

中国人民銀、国債売買を政策手段に利用も=高官

ビジネス

米テスラ、新型モデル発売前倒しへ 株価急伸 四半期
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中