最新記事

チベット

亡命生活60年となったダライ・ラマ 気がかりな継承者問題と中国「次の一手」

2019年3月19日(火)17時00分

自分の死後に継承者となる生まれ変わりは、60年来の亡命先であるインドで見つかる可能性があり、中国政府が指名する継承者は尊敬されないだろう──。写真は2017年9月、北アイルランドのロンドンデリーで記者会見するダライ・ラマ14世(2019年 ロイター/Clodagh Kilcoyne)

自分の死後に継承者となる生まれ変わりは、60年来の亡命先であるインドで見つかる可能性があり、中国政府が指名する継承者は尊敬されないだろう──。インド亡命から60年を迎えたチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世は18日、ロイターの取材にこう語った。

ダライ・ラマは、緑の丘や雪を頂いた山に囲まれたダラムサラの町にある寺の事務所で取材に応じた。前日に、兵士に扮装してインドに亡命してから60年の節目を迎えたばかりだ。

ダライ・ラマは、中国支配への蜂起が失敗した1959年にインドに逃れ、以来、チベットの言語的、文化的自治を守ろうと世界で支持を呼び掛けてきた。

1950年にチベットを管理下に置いた中国政府は、ノーベル平和賞受賞者で83歳になったダライ・ラマを、危険な分離主義者とみなしている。

自分の死後のことについて、ダライ・ラマは、中国政府がチベットの仏教徒に継承者を押し付けようとすると予測した。

「中国は、ダライ・ラマの生まれ変わりを非常に重要視している。私よりも、次のダライ・ラマの方に関心がある」と、伝統的な赤と黄の法衣をまとったダライ・ラマは語った。

「将来、もし自由の国であるこの地から出た人と、中国政府に選ばれた人との2人のダライ・ラマが出てきたときに、(中国が選んだ方は)誰も信じないし、誰も尊敬しない」と、ダライ・ラマは笑って付け加えた。

中国の指導者には、中国皇帝から継承した権限の一部として、ダライ・ラマの継承者を承認する権利があるというのが中国の立場だ。

だが、ダライ・ラマの死去とともにその魂が後継者となる子供の身体に宿り、生まれ変わりが起きると信じられているチベットでは、住人の多くが、中国のいかなる「口出し」も、チベットへの影響を強めようとする策略だと疑っている。

1935年生まれの現在のダライ・ラマは、2歳の時に前のダライ・ラマの継承者と認められた。

中国管理下のチベットに住む600万人超のチベット人は、中国政府がその写真を飾ったり公の場で信心を示すことを禁じているのにもかかわらず、今でもダライ・ラマを敬っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中