最新記事

北朝鮮

北朝鮮の少年少女を苦しめる「気持ち悪い」冬休みの課題

2019年2月12日(火)10時40分
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) ※デイリーNKジャパンより転載

大人たちが冬の「堆肥戦争」に忙しい時期、学生たちは毛虫取りに動員される(画像はイメージ写真) Anant_Kasetsinsombut/iStock.

<北朝鮮の人々は、年齢、性別限らず、様々な国家事業に動員されている。悲惨な事故も多発しているが中高生であっても何ら補償は行われない>

北朝鮮の人々は、年がら年中、当局から組織生活や思想の総括、さらに奉仕活動に半強制的に動員されている。それは、子供たちとて例外ではない。

参考記事:北朝鮮企業が少女たちの「やわらかい皮膚」に目をつけた理由

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、北朝鮮の小学校から高校までの学生たちが「毛虫取り」をさせられているという。朝鮮労働党が、毛虫による森林被害を防止せよとの指示を出したからだ。冬休みの間も、10代の学生たちは酷寒のなかで毛虫取りに強制的に動員されているというのだ。

RFAの平安南道(ピョンアンナムド)の消息筋によると、「学生たちは寒さにもかかわらず一日中毛虫を捕まえようと、山の中で苦しい思いをしている。一人当り、ビニール袋一杯の毛虫を捕まえなければならないノルマがあるので、学生たちは弁当まで持って山中を歩き回っている」という。

弁当を持っていけない貧しい家庭の学生は、毛虫を捕まえたその場で倒れることもあるという。それでも学校と当局は、同情するどころか、ノルマを達成できなければ生活総和の時間に自己批判を強要するというのだ。

冬の間の毛虫取りが終われば、北朝鮮の青少年は春に30日、夏に30日、秋に45日間、農村支援に動員される。この期間、学生たちは学校にも行かずに家族から離れて、協同農場で農作業をしなければならない。中学校3学年から大学を卒業するまでずっとだ。

参考記事: 北朝鮮の中高生「残酷な夏休み」...少女搾取に上納金も

このように年齢、性別限らず、北朝鮮の人々は様々な国家事業に動員されている。劣悪な労働環境のせいで、悲惨な事故も多発しているが、中高生であっても何ら補償は行われない。

ちなみに、学生たちが毛虫取りに動員されるのは、大人たちが「堆肥戦闘」に忙しいからだという。人糞を集めて肥やしを生産する「堆肥戦闘」は、毎年1月から2月にかけて行われる。日本に在住する脱北者のSさんは、次のように語る。

「北朝鮮で厳しい生活を体験したので、日本ではどんなことでもやってのける自信はある。しかし、堆肥戦闘だけは死んでもやりたくない」

極限状態で生き延びた脱北者さえも嫌がるのが、人糞集めなのだ。1人あたり驚くほどの量をノルマとして課せられ、人々は正月早々、人糞を求めてさまよい歩く。人糞には値段が付き、商品として市場で取引される。人糞を巡ってブローカーが暗躍、さらにはワイロまでが飛び交う世にも奇妙な光景が現出するのだ。

大人たちは人糞集め、子どもたちは毛虫取りに強制動員。北朝鮮当局は、国民達に嫌がらせをすることばかり考えているのかと思わせる。

[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。

※当記事は「デイリーNKジャパン」からの転載記事です。
dailynklogo150.jpg

ニュース速報

ビジネス

米株はほぼ横ばいで終了、米中合意受け一時最高値

ビジネス

米中合意受けドル売り、英与党勝利でポンド上昇=NY

ビジネス

米FRB当局者、経済は順調 金利据え置き容認

ワールド

米中が「第一段階」通商合意、関税発動猶予 米農産物

MAGAZINE

特集:進撃のYahoo!

2019-12・17号(12/10発売)

メディアから記事を集めて配信する「巨人」プラットフォーマーとニュースの未来

人気ランキング

  • 1

    共産党国家に捧げるジョーク:変装した習近平に1人の老人が言ったこと...

  • 2

    中国で焚書令、文化大革命の再来か

  • 3

    麻酔を忘れて手術された女性、激痛に叫ぶも医者が気づかない!?

  • 4

    習近平を国賓として招聘すべきではない――尖閣諸島問題

  • 5

    キャッシュレス化が進んだ韓国、その狙いは何だった…

  • 6

    熱帯魚ベタの「虐待映像」を公開、動物愛護団体がボ…

  • 7

    サルの細胞を持つブタが中国で誕生し、数日間、生存…

  • 8

    自殺した人の脳に共通する特徴とは

  • 9

    インフルエンザ予防の王道、マスクに実は効果なし?

  • 10

    ウイグル人と民族的に近いトルコはなぜ中国のウイグ…

  • 1

    食肉市場に出回るペット 出荷前には無理やり泥水を流し込み...

  • 2

    殺害した女性の「脳みそどんぶり」を食べた男を逮捕

  • 3

    熱帯魚ベタの「虐待映像」を公開、動物愛護団体がボイコット呼び掛ける

  • 4

    インフルエンザ予防の王道、マスクに実は効果なし?

  • 5

    中国で焚書令、文化大革命の再来か

  • 6

    ウイグル人権法案可決に激怒、「アメリカも先住民を…

  • 7

    次期首相候補、石破支持が安倍首相を抜いて躍進 日…

  • 8

    東京五輪、マラソンスイミングも会場変更して! お…

  • 9

    トランプ、WTOの紛争処理機能を止める 委員たったの…

  • 10

    共産党国家に捧げるジョーク:変装した習近平に1人の…

  • 1

    食肉市場に出回るペット 出荷前には無理やり泥水を流し込み...

  • 2

    「愚かな決定」「偏狭なミス」米専門家らが韓国批判の大合唱

  • 3

    「日本の空軍力に追いつけない」アメリカとの亀裂で韓国から悲鳴が

  • 4

    元「KARA」のク・ハラ死去でリベンジポルノ疑惑の元…

  • 5

    「韓国は腹立ちまぎれに自害した」アメリカから見たG…

  • 6

    文在寅の経済政策失敗で格差拡大 韓国「泥スプーン」…

  • 7

    GSOMIA失効と韓国の「右往左往」

  • 8

    殺害した女性の「脳みそどんぶり」を食べた男を逮捕

  • 9

    GSOMIA継続しても日韓早くも軋轢 韓国「日本謝罪」発…

  • 10

    日米から孤立する文在寅に中国が突き付ける「脅迫状」

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
「STAR WARS」ポスタープレゼント
ニューズウィーク試写会ご招待
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2019年12月
  • 2019年11月
  • 2019年10月
  • 2019年9月
  • 2019年8月
  • 2019年7月