最新記事

日本企業

スバル、新たなリコールに加え米通商問題のリスク 経営体力耐えきれるか?

2018年11月5日(月)16時00分

リコール公表の遅れに不信感も

スバルは10月23日、品質関連費用の計上を主要因として18年4─9月期の連結営業利益を従来予想の1100億円から610億円に下方修正すると発表した。引き下げた額490億円の大半がリコール費用に充てられるもようだ。

同時に、ユーザーに修理を呼びかけるリコールの公表が業績修正の発表より9日遅れたこと、さらには不具合情報の把握から5年以上も経っていたことに「ユーザー軽視」との批判も上がっている。

業績修正は東京証券取引所、リコールは国土交通省と届け出先が異なり、手続き上の時差が出たためで、スバル広報は「意図的にずらしたわけではない」と説明する。不具合情報への対応の遅れについては「原因究明に時間がかかった」ためといい、「結果的にお客様にご心配をおかけし、世間をお騒がせした」と謝罪している。

大幅コスト上昇の懸念

スバルが直面しているのは品質問題だけではない。完成車だけでなくエンジンなどの部品も日本から輸出している米国で関税が引き上げられれば、収益面でひときわ大きな打撃となる。関税を避ける新工場の建設は投資リスクが大きい。かといって販売価格への転嫁も難しく、大幅なコスト負担は避けられそうにない。

スバルは自動車メーカーの中でここ数年、屈指の収益力を誇ってきた。営業利益率は毎年10%以上を確保しており、18年3月期も11.1%と業界トップの水準だったが、18年4─9月期は4.1%まで低下する。

同社は5日に18年4―9月期の連結決算を発表する。19年3月期の連結予想では、為替影響などによる収益の改善はあるものの、4―9月期の下方修正分はマイナス要因となる。

「品質強化に最優先で取り組む」としてきた中村知美・スバル社長。勢いを増しかねない逆風の中で、収益への悪影響の拡大をどう食い止めるか、厳しい対応を迫られている。

(白木真紀 編集:北松克朗)

[東京 5日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 トランプvsイラン
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月8日号(7月1日発売)は「トランプvsイラン」特集。「平和主義者」の大統領がなぜ? イラン核施設への攻撃で中東と世界はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

赤沢再生相、ラトニック米商務長官と3日と5日に電話

ワールド

OPECプラス有志国、増産拡大 8月54.8万バレ

ワールド

OPECプラス有志国、8月増産拡大を検討へ 日量5

ワールド

トランプ氏、ウクライナ防衛に「パトリオットミサイル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    反省の色なし...ライブ中に女性客が乱入、演奏中止に…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中