最新記事

アメリカ政治

中間選挙で「トランプ化」した共和党 移民攻撃に同調

2018年11月4日(日)13時24分

 10月29日、米中間選挙を控えた共和党のテッド・クルーズ上院議員らは今月、多くの党関係者と同じ教訓を学んだ。それは、どのような形であれ「ドナルド・トランプ」の影から逃げるのは難しい、ということだ。写真はトランプ大統領。フロリダ州で31日撮影(2018年 ロイター/Carlos Barria)

11月の米中間選挙を控えた共和党のテッド・クルーズ上院議員とウィスコンシン州のスコット・ウォーカー知事は今月、多くの党関係者と同じ教訓を学んだ。それは、どのような形であれ「ドナルド・トランプ」の影から逃げるのは難しい、ということだ。

クルーズ、ウォーカー両氏は、2016年の米大統領選でトランプ氏と党候補指名を争った人物であり、これまで大統領とはほぼ無関係に、それぞれ自らの再選を目指す選挙運動を展開してきた。

だが、11月6日の投票日に向けて、情勢が厳しくなっていると世論調査が伝える中で、両氏は先週、それぞれテキサスとウィスコンシンで行われた集会で、トランプ大統領と同じ壇上に上がった。

ウィスコンシン州の集会でランプ大統領は、ウォーカー氏が2016年の大統領選の際には「やっかいな」相手だったが、いまは「素晴らしい友人だ」と騒々しい聴衆に対して語った。

また、テキサス州の支持者の前でもトランプ大統領は同じ週に、かつてはクルーズ氏のことを「嘘つきクルーズ」と罵倒していたが、今は「素敵なテッド」と呼んでいる、と語った。

選挙シーズンが始まるとともに、多くの共和党候補者は、今回の選挙が大統領に対する信任投票とならないよう注意を払った。トランプ氏は、引き続き米国民の過半数から支持されていないからだ。

同党の候補者は、米国経済の好調ぶりや、昨年議会を通過した減税法案などを前面に押し出したが、だが、こうしたテーマは有権者の心に響かなかった。

下院の過半数を民主党に奪還される可能性と、厳しさを増す上院選挙を控えて、世論調査ではトランプ支持と不支持が割れている現状にもかかわらず、熱心なトランプ信者の票を集めるため、大統領の応援を請う共和党候補が増えている。

また同党は、移民や国家安全保障といった問題についても、トランプ大統領の過激な論調を取り入れつつある。

トランプ大統領はこれから中間選挙の投票日まで多数の集会への参加を予定しており、選挙遊説の常連になる構えだ。

民主党が上院における過半数を奪還するには、来週の選挙で2議席上積みする必要がある。下院では23議席増が必要だが、こちらの方が可能性は高い。

クルーズ上院議員は依然として民主党の挑戦者ベト・オルーク下院議員と接戦を続けている。トランプ氏による応援を受けた直後、クルーズ候補は、2016年の大統領選で、トランプ氏が対立する民主党のヒラリー・クリントン候補にぶつけた言葉を真似てみせた。

「オルーク氏はクリントン氏とともに投獄されるべきだ」と先週行われたイベントで述べたのである。後にクルーズ氏は「冗談だった」と弁解した。

ウィスコンシン州知事への再選をめざすウォーカー候補は、無党派層の有権者を狙った選挙戦を展開してきたが、トランプ大統領の応援を控えて、民主党の対立候補トニー・エバーズ氏に対して、「不法移民に有利な措置を」支持している、とテレビコマーシャルで批判。この手法に対してエバーズ氏は「捨てばちだ」と一蹴した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏インフレ率、25年に2%目標まで低下へ=E

ワールド

北朝鮮の金総書記、新誘導技術搭載の弾道ミサイル実験

ビジネス

米国株式市場=ダウ終値で初の4万ドル台、利下げ観測

ワールド

ペロシ元下院議長の夫襲撃、被告に禁錮30年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中