最新記事

働き方

正規・非正規の待遇格差をなくせば日本の働き方は変わる

2018年10月24日(水)14時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

日本の場合、正規と非正規では収入面で著しい格差がある Boarding1Now/iStock.

<過去25年で日本の労働者のうち非正規雇用者が占める割合は2倍に増加。しかし非正規を正規にすることだけが改善策ではない>

雇用の非正規化は、日本社会の変化を言い表す代表的なワードの一つだ。戦後初期の頃までは自営業が多かったが、今では働く人の大半が雇用労働者だ。

雇用労働者は正規雇用者と非正規雇用者に分かれ、日本では後者が増えている。1992年の非正規雇用者(パート、アルバイト、嘱託、派遣社員)は1053万人だったが、四半世紀を経た2017年では2133万人に膨れ上がっている(総務省『就業構造基本調査』)。2倍以上の増加だ。

正規雇用と非正規雇用の比率は、1992年では「4:1」だったが、2017年では「3:2」に様変わりした。今日では、雇用労働者の4割が非正規雇用者ということになる。雇用の非正規化の数値的な表現だ。

不安定就労やワーキングプアが増えるなど、否定的に捉えられることが多いが、非正規も働き方の一つだ。ライト、柔軟でゆるい働き方ができるという面もある。非正規の形態で働いている人の思惑は様々だ。

2017年の『就業構造基本調査』では、非正規雇用者に対し、現在の就業形態を選んだ理由を尋ねている。<図1>は、5歳刻みの年齢層ごとの理由内訳を面グラフで表現したものだ。

maita181024-chart01.jpg

ライフステージやジェンダーの違いが出ている。学生が多い若年層では、学業の合間の学費や小遣い稼ぎが大半だが、働き盛りになると男性では「正規の仕事がないから」という理由が増えてくる。女性では「育児・介護との両立」「家計補助」が幅を利かせている。

「専門技術を生かせる」という理由も結構ある。細切れの形で、専門知識や技術を提供している人たちだろう。何とか自分の専門を生かしたいと、正規雇用の枠が著しく少ない専門職にしがみついている人も多いとみられる(図書館司書や大学非常勤講師など)。これらの職業の非正規雇用率は非常に高い。

注目したいのは、正規の仕事がないという理由でやむを得ず非正規でいる人たちだ。いわゆる「不本意非正規」で、実数にすると男女合わせて268万2800人、京都府の人口よりも多い。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベトナム、対米貿易協定「企業に希望と期待」 正式条

ワールド

インドネシア、340億ドルの対米投資・輸入合意へ 

ビジネス

アングル:国内製造に挑む米企業、価格の壁で早くも挫

ワールド

英サービスPMI、6月改定は52.8 昨年8月以来
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索隊が発見した「衝撃の痕跡」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    米軍が「米本土への前例なき脅威」と呼ぶ中国「ロケ…
  • 6
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「22歳のド素人」がテロ対策トップに...アメリカが「…
  • 10
    熱中症対策の決定打が、どうして日本では普及しない…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中