最新記事

米司法

米最高裁、カバノーの判事就任へ連帯感示せば正統性に懸念?

2018年10月10日(水)10時15分

10月6日、米連邦最高裁判所のクラレンス・トーマス判事は1991年の就任前にセクハラの訴えがあったためその適性を巡って論争が生じ、上院ではかろうじて承認される結果となった。写真は9月、上院公聴会で証言するカバノー氏。代表撮影(2018年 ロイター)

米連邦最高裁判所のクラレンス・トーマス判事は1991年の就任前にセクハラの訴えがあったためその適性を巡って論争が生じ、上院ではかろうじて承認される結果となった。しかしトーマス氏によると、他の8人の判事はすぐに温かく受け入れてくれたという。

トランプ米大統領が新たな最高裁判事に指名し、やはりセクハラ疑惑によって世論を分断した末に6日の上院本会議で承認されたブレット・カバノー氏にとっても、トーマス氏が指摘したような強固な伝統を持つ最高裁判事の「連帯感」はきっと心の支えになるだろう。

カバノー氏はトーマス氏と同じく保守派で、9人の判事の勢力図は保守派が5人、リベラル派4人となった。

そのリベラル派の中には、女性の権利を熱心に提唱するルース・ギンズバーグ氏がおり、同氏はカバノー氏が上院でセクハラ問題を巡る審議に呼ばれようとしていた中でも、セクハラや性暴力被害を告発する「#Me Too運動」への支援を表明した。

それでも専門家は、判事らはこれまでがそうだったように、それぞれの立場の違いはやり過ごす公算が大きいとみている。

スティーブン・ブライヤー判事の事務官を務めたカロライン・シャピロ氏は「判事たちは連帯性を保つことに非常に気を使っていて、それは単に連帯性のためだけではない。相互の意見が異なる人々が力を合わせて仕事をすることに重要な意味があると彼らは考えている」と述べた。

複数の専門家は、ギンズバーグ氏とブライヤー氏、エリーナ・ケーガン氏、ソニア・ソトマイヨール氏といった4人のリベラル派判事は、国論を二分する案件で少なくとも保守派の1人の支持を得る必要がある点を踏まえ、新顔のカバノー氏をことさら疎外しないようにする強い動機を持つ、と話した。

ケーガン氏は既にカバノー氏とつながりがある。ハーバード法科大学院の学長時代に、カバノー氏を教員として採用したからだ。

あるワシントンの弁護士はケーガン氏について、カバノー氏の就任前の問題を過去のものとして扱い、これから長年付き合っていく人物と最適な関係を築けるだけの現実的だとの見方を示した。

またソトマイヨール氏は2016年のイベントで、判事同士が口頭弁論後しばしば会食するケースを引き合いに出して、連帯感がいかに大事かを強調している。

ギンズバーグ氏に関しては、保守派の判事で16年に死去したアントニン・スカリア氏とイデオロギーの違いにもかかわらず、オペラという共通の趣味を通じて親しくしていたのは有名な話だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉄鋼関税、2倍の50%に引き上げへ トランプ米大統

ビジネス

アングル:トランプ関税、世界主要企業の負担総額34

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中