最新記事

アジア

アジア各国が気付き始めた中国「一帯一路」のヤバさ パキスタンも「借金の罠」に尻込み

2018年10月5日(金)17時00分

老朽化する鉄道

カラチからペシャワルに至るML-1路線は、パキスタンの老朽化した鉄道網の大動脈だ。パキスタンの鉄道網は近年、乗客数の減少、路線廃止、主要な輸送事業による急速に業績悪化を受けて、徐々に崩壊へと近づいている。

カーン政権はML-1をCPECにおける優先プロジェクトにすると公約しており、広大な国土における貧弱な移動手段の改善につながると期待している。

とはいえ、受け入れ国がインフラ建設資金調達に中国からの融資を利用するという、従来の一帯一路構想における融資モデルとは一線を画した資金調達オプションを模索しており、CPECプロジェクトに関しては、サウジアラビアその他の諸国にも投資を呼びかけている。

パキスタン当局者によれば、選択肢の1つは「BOT(建設・運営・譲渡)方式」だという。投資家もしくは企業が資金を拠出してプロジェクトの建設に携わり、主として鉄道輸送ビジネスを通じて生まれるキャッシュフローによって投資回収し、その後20─30年以内にパキスタンに所有権を返すという方法だ。

中国の駐パキスタン大使ヤオ・ジン氏は、中国政府はBOT方式に前向きであり、国内企業に投資を「促す」だろうと話している。

中国の一帯一路イニシアチブが主導する巨大鉄道プロジェクトは、他のアジア諸国でも問題に直面している。

タイとラオスを結ぶ路線は資金調達の遅れに悩まされており、一方でマレーシアのマハティール新首相は、中国が200億ドルを拠出する「東海岸鉄道計画(ECRL)」をあっさり中止してしまった。

中国とパキスタンの関係に関する著作のあるアンドリュー・スモール氏は、中国政府は融資には積極的だが、パキスタンにおけるプロジェクトの大半は収益性に乏しいため、投資には腰が引けていると語る。「問題は、中国側がこのプロジェクトから利益を得られると考えておらず、BOTに熱心ではないことだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

LSEG、金融データをチャットGPTに統合へ AI

ビジネス

午後3時のドルは155円前半、日銀利上げ見通しで一

ワールド

香港当局、高層住宅火災受け防護ネット全面撤去へ

ワールド

インドネシア、採掘規則違反企業を処分へ 洪水で死者
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 3
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 9
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中