最新記事

韓国事情

東京五輪は大丈夫? 韓国・平昌で厄介物になった五輪遺産

2018年8月29日(水)17時30分
佐々木和義

平昌五輪の会場建設は、突貫工事で行われたわけだが… Pawel Kopczynski-REUTERS

<平昌五輪が閉幕して半年、会場や鉄道など五輪の「遺産」の管理をめぐって韓国では対立が続いている>

平昌五輪が閉幕して半年。開催地の江原道は五輪施設のスピードスケート競技場やアイスホッケーセンター等を維持する管理費用の75%を国が負担し、25%を地元自治体が負担する案を提示しているが、国が難色を示すなど冬季五輪のレガシー(遺産)の管理を巡って対立が続いている。

管理者が決まらないアルペン競技場

アルペン競技が行われた江原道旌善(チョンソン)は原状復旧と存続で意見が対立する。競技場の建設用地は、原生林が生い茂る山林保護地域で、生態系の宝庫と呼ばれていた。

スロープの55%以上を復元して自然生態系を回復する計画だったが、五輪後の3月の国会で都鍾煥(ド・ジョンファン)文化体育観光部長官が本来の目的であるスポーツ施設として活用を模索すると述べて状況が一変した。2021年冬季アジア競技大会の招致を目指す提案が出され、地元の旌善郡は観光資源としての活用を主張する。

環境保護団体は、早期の復元を求めて監査院に監査を要求し、環境部も生態復元の不履行は環境影響評価法違反であるとして江原道に1000万ウォン(約100万円)の過怠金を科したが、地元住民600人余りが2018年8月22日に大統領府前で集会を開いて復元反対を訴えた。

管理者が決まらないスロープは放置されたままとなっており、周囲の土砂が流出してゴンドラを支える柱の一部が傾くなど、台風シーズンを前に土砂崩れを心配する声が上がっている。

氷がなくなった"巨大倉庫"の様相

江陵のスケート競技場も冷凍物流センター、テニス場、コンベンションセンター、スケート場、国家代表練習施設などさまざまな案が挙がったが結論には至っていない。常駐職員が清掃や主な機能の点検を行なっている程度で、8月に中央日報が取材した時には氷がなくなった"巨大倉庫"の様相を呈しており、コンクリートの底は割れていたという。

ボブスレーやスケルトンなどのそり競技が行われた平昌アルペンシアスライディングセンターは平昌五輪の閉幕から10日後の2018年3月5日に閉鎖が決まった。

そり競技は競技人口が少なく、選手とスタッフ合わせて19人しかいない。平昌五輪に向けて代表を育成したが、閉幕と同時に閉鎖と支援打ち切りが決まった。予算の目処が立たなくなった代表チームはスライディングセンターの廃止と同時に解散した。施設の今後は決まっていない。

(参考記事)韓国で後を絶たないパワハラ事件 SNSでさらに表面化

仁川空港とソウルを結ぶ高速鉄道KTXも廃止

早々に撤去を決めた施設もある。開会や閉会式が行われたオリンピックプラザは聖火台を残して解体した。人口4000人の平昌郡横渓里では活用方法がないという理由からだ。予算の浪費という声もあったが、思い切った決断として注目されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

次期米大統領専用機、納入再び遅延 当初予定から4年

ワールド

米南方軍司令官が退任、「麻薬密輸船」攻撃巡りヘグセ

ビジネス

日経平均は反落で寄り付く、米ハイテク株安を嫌気 5

ワールド

NATO事務総長の戦争準備発言は「無責任」、ロシア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中