最新記事

中国経済

人民元の下落、中国当局が放置 市場で一段安観測強まる

2018年8月3日(金)10時35分

8月1日、中国当局が人民元を急速な下落をいつになく放置している。こうした姿勢は景気刺激策の一環で、年内を通じて元は一段と値下がりするのではないかとの観測が、市場で広がりつつある。2011年撮影(2018年 ロイター/David Gray)

中国当局が人民元を急速な下落をいつになく放置している。こうした姿勢は景気刺激策の一環で、年内を通じて元は一段と値下がりするのではないかとの観測が、市場で広がりつつある。

4月から7月までの人民元の対ドル相場は8%安となり、4カ月間の下落率で過去最大を記録した。米金利上昇懸念や、中国の債券利回り低下に加え、米中貿易摩擦の激化が背景だ。

ただ以前に人民元が大きく売られた2015年8月から16年終盤までと異なり、中国人民銀行(中央銀行)はほとんど通貨安抑制に動いていない。

ING(香港)の広域中華圏エコノミスト、アイリス・パン氏は「貿易摩擦の存在とそのエスカレーションは、中国の純輸出が落ち込むことを意味し、だからこそ人民元はドルに対して下落すると心の底から思う」と話す。同氏によると、相場は足元の1ドル=6.82元前後から年末までに7元まで、さらに2.5%元安が進むと予想される。

15─16年に中国当局は、通貨を支えて多額の資金が海外に出ていくのを阻止するために1兆ドル前後もの外貨準備を投じた教訓から、その後厳格な資本規制を導入したため、同じような危機は生じないとみられる。

米債券運用大手ピムコのグローバル経済アドバイザー、ヨアヒム・フェルズ氏は先週の会議で「結局のところは中国側がどの程度の元安を望み、許容するかという問題に行き着く」と語り、当局は人民元がきっちりした下値のめどを設定しているとは考えていないと付け加えた。

「当局は通貨(政策)を主に経済成長を支える手段とみなしつつある。であるからわれわれの見解では、人民元はもっと下がる公算が大きいが、下落ペースは管理され緩やかな形になるだろう」という。

米中交渉

中国の米国製品の輸入額は、米国による中国製品輸入額のおよそ4分の1にすぎないので、人民元安は米国が課した制裁関税に中国が対抗する武器の1つとしては十分機能する。

また人民元安は、中国が実施している金融緩和策との相性も抜群だ。当局は既に債券利回りの低下を容認するとともに、銀行システムに流動性を供給し、銀行に中小企業への融資を促して景気の急減速を避けようとしている。

一方、みずほ銀行(香港)のシニア・アジアFXストラテジスト、ケン・チャン氏は、もしも米中通商交渉が正式に再開されれば、6.7─6.8元まで元が戻す可能性はあると見込む。

一部報道ではムニューシン米財務長官と中国の劉鶴副首相が非公式に会談し、交渉再開を模索しているという。

しかしチャン氏は「市場の全般的なムードは依然として弱気だ」と指摘し、交渉再開のシナリオは積極的に受け入れられていないようだとの見方を示した。

(Winni Zhou、Marius Zaharia記者)

[上海/香港 1日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 習近平独裁の未来
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年2月17号(2月10日発売)は「習近平独裁の未来」特集。軍ナンバー2の粛清劇は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」強化の始まりか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国こそが「真の脅威」、台湾が中国外相のミュンヘン

ワールド

米中「デカップリング論」に警鐘、中国外相がミュンヘ

ビジネス

ウォルマート決算や経済指標に注目、「AIの負の影響

ワールド

ドバイ港湾DPワールドのトップ辞任、「エプスタイン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活動する動画に世界中のネット民から賞賛の声
  • 2
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 3
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワートレーニング」が失速する理由
  • 4
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 5
    それで街を歩いて大丈夫? 米モデル、「目のやり場に…
  • 6
    世界市場3.8兆円、日本アニメは転換点へ――成長を支え…
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 9
    反ワクチン政策が人命を奪い始めた
  • 10
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 8
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 9
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 10
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中