最新記事

中国政治

全人代第一報──政府活動報告

2018年3月5日(月)15時42分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

3月5日に開幕した全人代で演説した李克強首相(前列)。汗を拭う姿はCCTV(中央テレビ局)には映らなかった Jason Lee-REUTERS

3月5日、全人代(全国人民代表大会)が開幕した。いつもは10日間の会期が15日間に延期される。まずは李克強国務院総理による政府活動報告などから何が読み取れるかを、第一報として読み解いてみよう。

GDP成長率目標値6.5%と「トップランナー型」

3月5日、日本時間の10時から全人代(全国人民代表大会)が北京の人民大会堂で開幕し、李克強国務院総理(以下、初出以外は敬称略)による約1時間50分にわたる政府活動報告(以下、報告)がなされた。

汗っかきの李克強は、冒頭20分ほどで、すでに額から汗をタラタラ流していた。場面がフロアーに切り替わってしばらくすると、その汗が無くなっていたので、報道するCCTV(中央テレビ局)側も「汗っかき体質」を知っていて、彼が汗を拭く時間を与えてあげていたのだろう。特に緊張しているという様子はなく、いつもの李克強だった。

報告の内容に関して、まずは、日本人が最も関心があると思われる今年のGDP(国内総生産)の成長率目標に関して見てみよう。

GDPに関しては、今年は6.5%前後の成長目標値が設定された。2017年の成長率は6.9%と、目標値の6.5%を上回っている。しかし李克強は「高い成長率を目標とせず、あくまでも質の高い経済発展を目指す」と、目標値を抑制的に設定したと述べている。

それでも、イノベーションやインターネット+(プラス)により経済発展を牽引するとして、これまで中国は「(先進国に)追いつけ型」だったが、これからは「トップランナー型」として世界の先端に立つことを強調した。

というのも、「中国のGDPが世界に占める割合は15%に達しており、世界の経済成長への寄与は30%を越えているからだ」と、李克強は声を大きくした。

国防予算案8.1%増

日本人が次に興味があるのは、中国の国防予算ではないかと思う。

今年の国防予算は、11069.51億人民元(約18兆4000億円)で、前年実績比8.1%増となる。アメリカに次いで、世界第二の予算額だ。

李克強は報告で、「(中国共産)党の新時代における強軍目標を達成するため、習近平強軍思想を国防と軍隊建設の指導的地位に定め、断固として中国の特色ある強軍の道を歩まねばならない」とした。

貧困脱却

今般の報告で目立ったのは「貧困脱却」に関して何度も触れたことだった。李克強は先ず、この5年間で6800万人の人民を貧困から脱却させたと述べ、さらに今年は1000万人を脱却させるつもりだと言っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中