最新記事

ペット

犬の外出時、口輪装着を義務づけるかで論争に 韓国最新ペット事情

2017年11月17日(金)21時22分
杉本あずみ


ペット人気の陰で問題となった「犬工場」



韓国SBSは人気番組「動物農場」で取材した「犬工場」をニュースでも取り上げた SBS / YouTube

こうした韓国のペット事情に一石を投じたのがSBSの人気番組「動物農場」だ。この番組が紹介したショッキングな内容によってペットの在り方が見直されるきっかけとなった。「動物農場」は、視聴者からの投稿で珍しい動物や面白いエピゾードを番組スタッフが取材して放送する番組だが、たまに虐待された動物などを救助してくれという深刻な内容も取り上げる。2016年にこの番組がスクープしたのが「犬工場」だ(後に「猫工場」も取り上げて話題となった)。

販売用に犬を無理矢理交尾させ、工場のように子犬を次々と産ませて商売する業者を取材し放送した。不潔な檻に閉じ込め興奮剤を注射したり、獣医でもない一般人が犬を開腹手術する内容に、愛犬家ならずとも胸を締め付けられた。この放送は波紋を呼び、2017年7月には、「犬工場」廃止の法律が執行される事となった。具体的には、強制的に妊娠・出産を誘導する診療と手術を全面禁止した。これにより、劣悪な状況から少しでも動物たちが救われることを願うばかりである。

また、韓国の犬といえば「食用犬」を思い出す人も多いだろう。確かに今でも街を歩けばポシンタンやゲジョルタンなどという名前の犬肉スープの専門店を見かけることはできるが、その来店客は中高年が多い。若者の間では好んで食べる人は少なくなった。先月28日には、ソウルにて食用犬の救出を目的としたドッグフェスティバルが開催された。主催者によると、毎年200万匹の犬が食用に殺されているという。

韓国でも核家族化が進み、お年寄りがペット面倒を見なくてはならない状況が進んでいる。また、中高年のなかには予防接種に対しての認識が低い人が多く、受けていないペットも多い。今回、口輪やリードの義務化が一部で検討されているが、それでもまだ公園などで犬のリードすらつけずに散歩している飼い主もよく見かける。

今回のチェ・シウォンのペットの事件は悲しい結果を生んでしまったが韓国で改めてペットとの生活を見直す機会となった。いったん動き出すと対応の早い韓国らしくペット規制をすぐに作ろうと動き出すのは良い部分でもある。これからも犬や猫が人類の友達であり続けるため、人間が時代の変化に合わせペットへの責任を見直していくことが必要だろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦力増強を指示 戦術誘導弾の実

ビジネス

アングル:中国の住宅買い換えキャンペーン、中古物件
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 9

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中