最新記事

アメリカ政治

ツイートの影に隠れた「トランプ効果」 アメリカ社会に変化の兆し

2017年10月2日(月)10時37分


役所を規制

トランプ政権は発足からの半年間で、前政権時代の規制措置800件余りを撤廃するか、導入を遅らせた。また個人の自由を最大限尊重するリバタリアン系のシンクタンク、コンペティティブ・エンタープライズ・インスティテュート(CEI)によると、既存の規制撤廃や延期を目的としたものも含む新たな規制の提案件数は、前年同期比で32%減少し、ジョージ・W・ブッシュ政権とビル・クリントン政権の最初の半年よりも少ない。

一方でトランプ氏は連邦政府機関に対して、新しい規制を1つ策定する場合は2つの既存規制廃止を義務付けるなどの制約を設定している。CEIの政策担当バイスプレジデント、ウェイン・クルース氏は「ロナルド・レーガン政権以降で最も大幅な規制撤廃の動きになっているのは間違いない。トランプ氏は今のところ、一般国民よりも役所を縛ろうという姿勢だ」と話した。

多くの企業経営者は、トランプ氏が経済活動を阻害していると自身でみなす政策を廃止する、という約束を果たそうとしていることに拍手を送っている。ただ、環境規制や労働者保護規制を減らすこうした動きは国民の健康や安全よりも企業利益を優先し、支援してくれた労働者層へのアピールにトランプ氏が掲げてきた公約とは完全に矛盾するとの批判もある。

実質的成果

トランプ氏は、法制化の手続きが滞っている問題のいくつかに関しても、自分の思うような方向に事態を進める手立てを見つけ出している。一例を挙げると、オバマケア改廃法案は議会を通過できなかったが、同氏が低所得層向け政府補助金支払いの削減をちらつかせたため、先行き不透明感から大手保険会社がいくつかの州の保険販売サイトから撤退するか、来年の保険料を大きく引き上げた。

また国境の壁建設計画も議会で審議が停滞しているものの、トランプ氏の強硬な発言が米国への不法入国抑制に効果を発揮したとみられる。1月に4万2000人を記録したメキシコとの国境で検挙された不法入国者数は6月がおよそ1万6000人で、63%も減少した。その後じりじりと増えているとはいえ、昨年の水準はなお下回っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米12月住宅建設業者指数39、8カ月ぶり高水準=N

ビジネス

物価は再び安定、現在のインフレ率は需給反映せず=F

ワールド

ハセット氏のFRB議長候補指名、トランプ氏周辺から

ワールド

ゼレンスキー氏と米特使の会談、2日目終了 和平交渉
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 6
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    「職場での閲覧には注意」一糸まとわぬ姿で鼠蹊部(…
  • 9
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 10
    世界の武器ビジネスが過去最高に、日本は増・中国減─…
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 5
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中