最新記事

アマゾン

小売店を打ちのめしたアマゾン 今なぜ実店舗に手を出すの?

2017年7月26日(水)21時00分
ケイト・ローレンス ReadWrite[日本版]編集部

未来のスーパーマーケットはどうなるのか? (c)ReadWrite[日本版]編集部

<ボタン一つで日用品を届ける amazon dashに、生鮮食品を届けるamazon freshとあらゆる物を、買い物に行かずに手に入れることを実現してきたアマゾン。だが、最近ではリアル書店をオープンさせ、高級スーパーのホールフーズを買収するなど「リアルな買い物」にも進出してきている。その狙いとは?>

アマゾンは6月16日、ホールフーズ(Whole Foods Market)を1株あたり42ドル、総額137億ドルを現金で買収するにあたり、合併契約の最終的な合意に至ったと発表した

アマゾンは、ニッチな本屋や無人食料品店 Amazon Goの試みを除いては、表向きはオンライン小売業者として20年以上営業している。他方で、ホールフーズが提供しているのは店内での買い物や試食、料理教室など体験型だ。アマゾンがオンラインストアで商品を手頃な価格で提供することにより消えていった実店舗型の小売店の数を考えると、これはおかしなことのように思える。

一方では、ヨーロッパ、オーストラリア、英国で店舗展開を行ってきたドイツ系ディスカウントスーパーのアルディやリドルは、米国でその存在感を大きくしつつある。

Ocadoから得た教訓とは?

アマゾンが、アクティブユーザーを58万人以上抱える世界最大の食品専門オンラインストアOcadoに接近したというのであれば、それほど驚くことでもなかっただろう。Ocadoは英国の顧客に毎日200万点以上の商品を出荷しており、配送センターを管理するソフトウェアを手がける700名のエンジニアを社内に抱えている。また足が速い食品の宅配は収益性が高いことから、クラウドやロボティクス、AIやIoTに大きな投資を行っている。


■Ocadoが開発したセンサー付きロボットマニピュレータ euronews Knowledge / YouTube

倉庫の自動化はOcadoがほかのオンライン食品販売業者と一線を画しているところであり、OSP hiveなどのプロジェクトでは貯蔵庫から注文が入った商品を持ってくるために大量のロボットが使われている。また日々、より多くの食品が、センサー付きのロボットマニピュレータを使って包装されるようになっている。

彼らはまたEUの研究開発とイノベーションを推進する枠組みであるHorizon 2020でも、SecondHandsSoMaといった大きなプロジェクトを持っており、非常に高度なロボティクス、AI、マシンラーニング、先進的なセンサーを組み合わせ、倉庫で働く職員をリアルタイムで理解し補助しようとしている。

更にはOcado Smart Platformという、ほかの小売業者がオンライン販売を行うための独自のソリューションも提供している。商用のエンドツーエンドなソフトウェアや技術と、これまた商用の棚卸資産ソリューションを組み合わせたものだ。ホールフーズを買収することによって裕福な固定客を多く得ることになることを考えれば、Ocadoが辿った成功の道筋を、アマゾンのジェフ・ベゾスも辿ろうと考えたとしても驚くことではないだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中