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イラン同時テロの狙いとは? なぜこのタイミングで?

2017年6月15日(木)10時00分
ウィル・マッキャンツ(ブルッキングズ研究所中東政策研究センター上級研究員)

もう1つは、ISISの指南書『野蛮の作法』に書かれているような戦略上の理由だ。ISISの支配地域を攻撃するイランに報復するため、全面的な宗派戦争を仕掛けてイラン国内のスンニ派を自陣営に引き入れ、イラン全土に混乱を引き起こそうというのだ。

さらにアルカイダに対抗して、過激な不満分子を自分たちの旗の下に集める狙いもあるだろう。シリアとイラクで多数の戦闘員が死亡している今、ISISは喉から手が出るほど新兵が欲しいはず。テヘランで大胆なテロ攻撃を行えば、アルカイダのふがいなさが際立つ。ラマダン(断食月)に世界中でテロを行うよう支持者に呼び掛けるためにも、組織の健在ぶりを誇示する必要があったのだろう。

【参考記事】イランはトランプが言うほど敵ではない

いずれにせよISISの犯行だとすれば、ほかの多くのスンニ派テロ組織に先駆けて、イランの中枢への攻撃に成功したことになる。だが支配地域が縮小し、戦闘員の士気が低下するなか、今回のテロで「一発逆転」は望めず、イランの逆襲で大打撃を受ける可能性もある。

それでも模擬国家から武装集団に転落しつつあるISISにとって、今回のテロは一時の「景気づけ」にはなった。

From Foreign Policy Magazine

[2017年6月20日号掲載]

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