最新記事

中国経済

人民元支援に躍起の中国当局 今秋の指導部交代前に市場安定狙う

2017年6月13日(火)08時45分

6月9日、中国当局が、さまざまな手段で人民元の値動きのコントロールを強化し始めた。写真は人民元の紙幣。5月撮影(2017年 ロイター/Thomas White)

中国当局が、さまざまな手段で人民元の値動きのコントロールを強化し始めた。相場を押し上げ、市場の信頼を取り戻して資金流出などのリスクを予防する狙いだ。複数の政策関係者が明らかにした。

ムーディーズが先月に中国の格付けを予想外に引き下げ、人民元先安観が高まると、中国当局は以前のような為替市場への積極介入姿勢を復活させた、と市場参加者は話す。

さらに政策関係者によると、人民銀行(中央銀行)が先月実施した謎だらけの「カウンターシクリカル(反景気循環)な調整要素」導入という人民元基準値(中間値)の見直しは、いかに当局が市場の元安予想を一掃し、1ドル=7元に向けた値下がりを阻止することに真剣になっているかを浮き彫りにしている。

中国は債務問題を巡るリスクのほか、米国の金利上昇に伴う資金流出、対米通商関係悪化の可能性などで経済が打撃を受けるのではないかと懸念されている。こうした中で、秋に予定している指導部交代を前に市場の人民元に対する信頼を確保することこそが、当局の重要課題になっている、と政策関係者は指摘する。

政策関係者の1人は「(当局は)明らかに(人民元への)締め付けを強めており、それは政治や外交と関連したものだ。通貨当局の立場としては、市場の期待形成に影響しかねない1ドル=7元という節目まで元安が進むのを断固阻止したい」と述べた。

人民銀行は、ロイターの問い合わせに電子メールで回答し、カウンターシクリカルな調整要素導入が人民元のコントロール強化だとの見方を否定。「そうした言説は真実ではない」と主張するとともに、基準値見直しはマクロ経済の基礎的条件をより良く反映し、「根拠のない」市場の予想を抑えるためだという公式見解を繰り返した。

一方、2人目の政策関係者は、米連邦準備理事会(FRB)が追加利上げに動こうとしている中で、資金流出によって元安が止まらなくなる事態を中国当局が恐れた面があるとの見方を示した。

これらの政策関係者の見立てでは、当局は人民元基準値の新たな枠組みを研究していたところ、ムーディーズの格下げを受けて前倒しで導入せざるを得なくなったのではないかという。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されずに「信頼できない人」を見抜く方法
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中