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トンガで跋扈する中国のヒットマン

2017年6月7日(水)10時00分
クレオ・パスカル(英王立国際問題研究所研究員)

06年春にソロモン諸島で起きた暴動もその1つ。政府と中国人移住者が癒着しているという地元住民の不満により中国人コミュニティーが標的になったが、暴動発生を受けて中国政府はソロモン諸島にチャーター機を派遣し、何百人もの中国系住民を中国本土に避難させた。

ソロモン諸島は台湾と国交を持っており、中国とは正式な外交関係がない。それでも、中国政府は現地の中国人コミュニティーを通じて、いわば裏口からソロモン諸島の政治に影響力を行使しているようだ。

こうして、海外の中国人コミュニティーは中国本土の影響下に置かれ続け、地元社会への融合が進まない。トンガには大きな中国人コミュニティーが存在しているが、そのコミュニティーはトンガ社会全体と切り離されているのだ。

ポヒバは5月に入って記者会見を開き、「数年以内に」トンガが中国人に牛耳られてしまうだろうと警鐘を鳴らした。また、19年の「パシフィックゲームズ」(南太平洋諸国のスポーツ大会)開催に向けて、中国政府の資金拠出によりトンガに複合スポーツ施設を建設することが決まっていたが、5月になってトンガ政府は開催返上を正式に表明した。

トンガの中国人コミュニティーを取り巻く犯罪が減れば、中国も含めて全ての当事者にとって好ましい。それを実現するために必要なこと、それは中国などの外国が口を挟むのをやめて、トンガ国内の問題をトンガ人自身に解決させることだ。

From thediplomat.com

[2017年6月 6日号掲載]

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