最新記事

仏大統領選

極右ルペンの脱悪魔化は本物か

2017年4月21日(金)10時30分
エマ・ケイト・サイモンズ

父親時代の自由市場寄りで小さな政府志向の政策も、10年ほど前からは保護主義的かつポピュリスト的な「経済ナショナリズム」路線に転換させている。イスラム教徒や移民に対しては強硬だが、反ユダヤ的発言はこれまで口にしたことがなく、同性愛者を嫌悪したジャンマリに倣うこともなかった。

こうした努力は実を結んでいるようだ。大統領選では、中道派無所属のエマニュエル・マクロン前経済相と支持率首位を争い、決選投票へ勝ち進むのはほぼ確実とみられている。

しかし4月23日に大統領選第1回投票が迫るなか、国民戦線のもう1つの顔が浮かび上がってきた。党指導部には、ヒトラー崇拝者や極右ナショナリストがひしめき、ルペンが大統領に選ばれた暁には政権幹部となるはずの側近にもそうした面々がいるという。

「ルペンに投票するつもりの有権者は、彼女が『自由の身』でないことを知るべきだ」と語るのは国民戦線の元幹部エメリック・ショプラード。彼は、ジャーナリストのマリーヌ・テュルシとマティアス・デスタルがルペンと国民戦線の内幕を調査した著書『マリーヌは何もかも承知だ』の取材にも応じている。

3月に刊行された同書や最近のメディア報道が注視しているのは、ルペンの古参の顧問フレデリック・シャティヨンだ。

【参考記事】極右政党を右派ポピュリズムへと転換させたルペンの本気度(後編)

週刊紙カナール・アンシェネの記事によれば、ルペンの大学時代からの友人であるシャティヨンはヒトラーに心酔。アルジェリア戦争記念式典でナチス式の敬礼をしたとして情報当局に目を付けられたことがあり、ヒトラーの誕生日を祝う仮装パーティーも主催している。

シリアのバシャル・アサド大統領周辺と商取引をしていることでも知られる。昨年流出したパナマ文書では、総額31万8000ドル以上のマネーロンダリング(資金洗浄)疑惑に関連する人物として名前が挙がった。

シャティヨンは12年の選挙の際、国民戦線のために不正な資金集めをした容疑で訴追され、党の活動に携わることを禁じられている。だが3月に報じられたところによれば、今もルペンの選挙対策チームの一員として報酬を受け取っているという。

国民戦線の元幹部らによると、シャティヨンはルペンに財務やコミュニケーション、外交政策に関する助言も行っている。シリア問題をめぐって、介入に反対するロシアや中国をルペンが称賛したのは、シャティヨンの見方に従った結果とされる。

シャティヨンは、国民戦線の資金調達の牽引役も担ってきた。とはいえその手法は問題含みで、複数の不正行為の容疑で捜査の対象になっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送-米政府、海上停滞中のイラン産原油売却を容認 

ワールド

米国防総省、パランティアのAIを指揮統制システムに

ビジネス

米ユナイテッド航空 、秋まで運航便5%削減 中東情

ワールド

米、イラン戦争の目標達成に近づく=トランプ氏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラリアの「NVES規制」をトヨタが切り抜けられた理由
  • 3
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 4
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 5
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    「嘘でしょ!」空港で「まさかの持ち物」を武器と勘…
  • 8
    メーガン妃、親友称賛の投稿が波紋...チャリティーの…
  • 9
    将来のアルツハイマー病を予言する「4種の先行疾患」…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 6
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 7
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 8
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中