最新記事

2016米大統領選

「頭のいい」指導部のせいで、米民主党はすべてを失った

2016年11月17日(木)10時45分
ジム・ニューウェル(スレート誌ライター)

Brian Snyder-REUTERS

<民主党指導部にとってはインサイダーのクリントンをもり立てたために、勝てるはずの戦いで手痛い敗北を喫した>(写真:大統領選から一夜明けて敗北宣言をしたクリントン)

 大統領のポストを失い、上下院の多数議席を獲得できず、今や米民主党は連邦レベルではほぼ無力に等しい。11月9日未明の衝撃を、私たちは生涯にわたって繰り返し思い出すだろう。それは未来の世代にも語り継がれるような衝撃だった。

 あまりの展開に今は何が起きたか1%も理解できていない。それでも、現時点ではっきり言えることがある。自ら物笑いの種になった民主党指導部はもうおしまいだということだ。

 議員やコンサルタントや選挙参謀や中道左派のメディアが主張してきたこと――あの衝撃の結末を迎えるまでに、ここ数年言われてきたことはすべて、ただのたわ言だった。

【参考記事】ドナルド・トランプとアメリカ政治の隘路

 民主党指導部は予備選でひそかにヒラリー・クリントンに肩入れするという嘆かわしいミスを犯した。クリントンはまずい候補者だ。相手陣営にやじを飛ばすだけで有権者の心をつかむメッセージを打ち出せない。今のアメリカを覆う政治的なムードにも、民主党内で盛り上がった若い熱気にもそぐわなかった。しかもメール問題やクリントン財団の資金に絡む疑惑など厄介なお荷物が付いて回った。

「頭のいい」民主党指導部には、そんなことは分かっていたはずだ。それでも彼らはクリントンをもり立てた。民主党指導部は閉鎖的な社交クラブでアウトサイダーを歓迎しない。自分たちに敬意を払わず、勝手に動くからだ。

メディアの分析も的外れ

 民主党支持の有権者は指導部の言うことを信じた。状況を完全に把握していると豪語し、違う意見を無視する指導部を。

 指導部はこう言っていた。クリントンは政界で長年のキャリアがあるし、共和党は新しい攻撃材料を見いだせないだろうから、本選ではクリントンが有利だ――今にして思えば、笑ってしまうような言い草だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 8
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中