最新記事

朝鮮半島

北朝鮮対応に悩む中国、「影響力は過大評価」の声も

2016年9月23日(金)09時00分

9月16日、北朝鮮に対する新たな制裁決議について、他の国連安全保障理事会メンバーと協議を始めたものの、中国は同盟国の核・ミサイル実験強化にどう対処すべきか、頭を悩ませている。写真は中国の国旗(左)と北朝鮮の国旗。中国・浙江省にある閉鎖された北朝鮮レストランで4月撮影(2016年 ロイター/Joseph Campbell)

 北朝鮮に対する新たな制裁決議について、他の国連安全保障理事会メンバーと協議を始めたものの、中国は同盟国の核・ミサイル実験強化にどう対処すべきか、頭を悩ませている。

 北朝鮮と長い陸続きの国境を分かち合う中国は、好戦的で孤立する北朝鮮に変化をもたらすことのできる実力を持つ唯一の国と見られている。だが中国政府は、制裁強化が北朝鮮内部の崩壊につながりかねないことを危惧している。また、地域の緊張を高めている責任は、米国とその同盟国である韓国にあるとも考えている。

 北朝鮮が5回目となる核実験を実施した後で、中国の北朝鮮に対する姿勢は変わったかとのロイターの質問に対し、中国指導部に近い関係筋は、中国は窮地に立たされていると話す。

「中国は、地域の核軍拡競争の引き金になりかねない核兵器開発を北朝鮮が行うことに断固反対している。その一方で、北朝鮮は大きな頭痛の種だが、政権交代は選択肢ではない。政権の崩壊は(中国)北東部に混乱をもたらすからだ」と、この関係筋は匿名で語った。

 韓国政府の下で南北朝鮮が統一され、中国との国境沿いに米軍が足を踏み入れることは、中国政府にとってはまさに悪夢である。

 北朝鮮が崩壊し、大量の難民が比較的侵入しやすい国境を越えて、中国北東部の工業地帯に流入すれば、多大な経済的損失を被るだけでなく、中国政府の支配を大いに揺るがすことにもなる。

 このような懸念は今に始まったことではないが、中国は現在、米国が最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」を韓国に配備する決定を下したことにひどく腹を立てており、自国の安全保障が危ぶまれていると主張している。また、北朝鮮の最近の好戦的な態度も、THAAD配備が原因だとしている。

 中国は、THAAD配備と北朝鮮に対する制裁を支持するかどうかの問題をはっきりと結び付けてはいない。北朝鮮が最近実施したミサイル・核実験を非難はするが、制裁だけで問題は解決できないとし、同国との協議再開を訴えている。

 中国はまた、北朝鮮による5回目の核実験に対する必要な反応は、国連の枠組みのなかで示すとしている。

「国連安保理決議において交渉中だ」と、パワー米国連大使は15日述べた。

 外交官らによれば、協議はまだ始まったばかりであり、交渉は長く、厳しいものになりそうだという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏、米陸軍長官と和平案を協議 「共に取

ビジネス

12月FOMCでの利下げ見送り観測高まる、モルガン

ワールド

トランプ氏、チェイニー元副大統領の追悼式に招待され

ビジネス

クックFRB理事、資産価格急落リスクを指摘 連鎖悪
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中