最新記事

アジア

習近平が北京訪問のスー・チーと会談、「正しい方向」に動く必要訴え

2016年8月20日(土)12時16分

 8月19日、中国の習近平国家主席(写真右)は、ミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相と会談した。北京で同日代表撮影(2016年 ロイター)

中国の習近平国家主席は19日、ミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相と会談し、中国とミャンマーの関係を「正しい方向」に発展させたいと語った。

アウン・サン・スー・チー氏主導の新政権が4月に発足して以来、中国は資源豊かなミャンマーと良好な関係を築こうと外交攻勢を掛けている。

習氏はスー・チー氏に対して「ミャンマー国民は国家の素晴らしい将来のための新たな出発点に立っている」と述べた。「2国間関係を新たに進展させ、両国の人々に目に見える利益をもたらすため、正しい方向に沿って動くべきだ」とした。

報道陣を前にした発言の中で、習氏は中国側が投資する36億ドル規模のミッソンダム計画の行方には言及しなかった。ミャンマー北部のイラワジ川上流で計画されていた水力発電ダムには、環境への影響を懸念する地元住民が抗議運動を繰り広げ、ミャンマーのテイン・セイン前政権は2011年に計画を中止し、中国の反発を招いた。

中国はダムの建設再開を図ろうとしている。当初の予定では、ダムでつくられる電力の9割は中国に送られる。

他の水力発電ダムと合わせて、ミッソンダムの事業を検証しているミャンマーの委員会は、11月11日に報告書を出す予定だ。

中国国営ラジオによると、スー・チー氏はダム問題について委員会が「最良の解決策」を模索するだろうとしている。ただ、それが何かは全く分からないと話したという。

ミャンマー最大の都市であるヤンゴンでは18日、60人の活動家が中国大使館を通して習氏に対して、ミャンマー国民の懸念事項を真剣に考慮することを願うとする書簡を送った。

書簡は「ミッソン計画を立案されて以来、ミャンマー国民の意見が十分に聞き入れられてこなかったことについて、中国が真剣に考えてくれるだろうと信じている」としている。活動家のひとりはロイターに対し、スー・チー氏への支持を表明。書簡は、中国がスー・チー氏に「圧力を掛けることがないよう」求めるものだと述べた。

ミッソン計画に関する解決策を見出すことはスー・チー氏にとって重要だ。ミャンマーと中国の国境に拠点を置く少数民族の武装勢力との協議には中国の協力が必要だからだ。

中国の国営テレビによるとスー・チー氏は国境の安定に向けて中国とともに努力し、両国の「友好的な関係」に影響を与えるようなことはさせないと述べた。

習氏は、ミャンマーの平和に向けて、引き続き「建設的な役割」を果たすと述べたという。



[北京/ヤンゴン 19日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米小売売上高4月は前月比横ばい、ガソリン高騰で他支

ワールド

スロバキア首相銃撃され「生命の危機」、犯人拘束 動

ビジネス

米金利、現行水準に「もう少し長く」維持する必要=ミ

ワールド

バイデン・トランプ氏、6月27日にTV討論会で対決
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    奇跡の成長に取り残された、韓国「貧困高齢者」の苦悩

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中