最新記事

英EU離脱

EU離脱によるポンド安でイギリス企業M&Aに好機到来、夏場以降に件数増加か

2016年7月25日(月)18時08分

7月24日、法律事務所ハーバート・スミス・フリーヒルズのUKコーポレート部門責任者、ベン・ワード氏は「買収機会であることは明白だ」と指摘した。写真はマンチェスターで3月撮影(2016年 ロイター/Phil Noble)

 英国の欧州連合(EU)離脱決定を受けたポンド安を機に、英国企業を割安で買収しようと機会を探る外国企業が目立っている。トムソン・ロイターのデータによると、6月23日の国民投票以降、外国企業による英国企業の買収案件は約60件、買収総額は345億ドルに達した。

 これは国民投票までの1カ間と比べると、案件数こそ79件から減ったものの、買収総額は43億ドルから大幅に拡大した。ソフトバンク<9984.T>による英半導体設計ARMホールディングスの買収(320億ドル)が大きな割合を占めた格好だ。

 英国がEU離脱を決めれば、国内経済やEU単一市場へのアクセスをめぐる不透明感からM&A(合併・買収)が一定期間枯渇するのではないかとの見方があったものの、ひとまずは否定されたといえる。

 英国企業に関心を持つ外国企業の事情に詳しい複数のバンカーによると、夏場を過ぎれば英国企業の買収が増える可能性もあるという。

 ソフトバンクによるARM買収について、英国政府は同国経済の底堅さを示すものだと指摘。しかし、M&Aを専門とするバンカーによると、国民投票後の買収案件のうちいくつかは、英国経済に対する強気の見方というよりも為替レート要因で英国企業に比較的割安感が出たことのほうが要因としては大きいという。ポンドは国民投票後に31年ぶりの安値を付けた。

 法律事務所ハーバート・スミス・フリーヒルズのUKコーポレート部門責任者、ベン・ワード氏は「買収機会であることは明白だ」と指摘。「ドル、人民元、円という強い通貨圏の人々は間違いなく健全なポンド建て資産の獲得に関心を抱くだろう」と述べた。

 国民投票以降の買収案件にはこのほか、南アフリカの小売り大手シュタインホフ・インターナショナルが英格安小売りのポンドランドを約6億ポンドで買収合意した案件などがあった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パプアニューギニアで大規模な地すべり、300人以上

ワールド

米、ウクライナに2.75億ドル追加軍事支援 「ハイ

ワールド

インド総選挙、首都などで6回目投票 猛暑で投票率低

ワールド

中国、台湾周辺での軍事演習終了 46機が中間線越え
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目の前だ

  • 2

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」...ウクライナのドローンが突っ込む瞬間とみられる劇的映像

  • 3

    批判浴びる「女子バスケ界の新星」を激励...ケイトリン・クラークを自身と重ねるレブロン「自分もその道を歩いた」

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 6

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 7

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 8

    テストステロン値が低いと早死にするリスクが高まる─…

  • 9

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 10

    あり得ない密輸!動物87匹をテープで身体に貼り付け…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 4

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 7

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 8

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 9

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 10

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中