最新記事

サミット

安倍首相が描く伊勢志摩サミット合意、財政出動の合意は無理か

2016年5月10日(火)17時23分

 当初、首相官邸や内閣府では「アベノミクスの成果」として、税収の増加分を財源に充てる方針だった。

 しかし、財務省を含めた政府内の調整過程で、円安効果や景気サイクルの影響を除くべきだとの意見も出て「政府内に全くコンセンサスが無い状態」(政府関係者)のまま、大型連休明けを迎えてしまった。

円高・株安、税収見積もりの打撃に

 また、政府内の一部で懸念されたリスクの一部が、早くも表面化するという環境変化にも直面している。それは為替が円安から円高に転換した場合、税収増から一転して税収減に陥るという懸念だ。

 政府の試算では、円相場が10%円高となることで国内総生産(GDP)は0.3%押し下げられる。125円近い円安水準から足元の円相場は20円近い円高が進行しており、年初の政府経済見通し1.7%は1%程度の低成長にとどまるとの見通しもささやかれている。

 年初来の円高が企業収益を直撃、株価の下落もあいまって、法人税や所得税は、これまでの3年間のように右肩上がりとはいきそうになく、2016年度の税収も1.7%成長を前提とした当初予算の57.6兆円を確保できない可能性が高まっている。

サミット乗り切りにハードル

 さらに情勢を複雑化させているのが、来年4月からの消費再増税を実施するのか、延期するのかという問題だ。

 消費増税すれば、来年度に約5兆円を税収増としてカウントできるが、延期ならその分の税収増をどうするのか、という問題が課題として浮上してくる。当然、その判断によって「一億総活躍プラン」の規模や中身にも影響が出てきてしまう。

 伊勢志摩サミット前に、安倍首相は主要7カ国の足並みをそろえるという大きな課題と、日本の打ち出す目玉政策の財源問題を解決するという国内での政策調整をクリアする必要性に迫られている。

 果たして内外に残る高いハードルを安倍首相は乗り越えることができるのか。その結果は、サミット最終日の27日にはっきりする。

 (中川泉 編集:田巻一彦)

[東京 10日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

メラニア夫人、プーチン氏に書簡 子ども連れ去りに言

ワールド

米ロ首脳、ウクライナ安全保証を協議と伊首相 NAT

ワールド

ウクライナ支援とロシアへの圧力継続、欧州首脳が共同

ワールド

ウクライナ大統領18日訪米へ、うまくいけばプーチン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 5
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 6
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 7
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「軍事力ランキング」で世界ト…
  • 10
    「デカすぎる」「手のひらの半分以上...」新居で妊婦…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 7
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 8
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 10
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中