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米中関係

トランプが大統領でもアジアを手放せないアメリカ

2016年5月10日(火)16時00分
河東哲夫(本誌コラムニスト)

 逆に日本を含めたアジア諸国も、アメリカの重要性を認識する必要がある。東アジアの経済は、対米輸出を成長のエンジンとしてきた。稼いだドルはアメリカに再投資し、それで経済を膨らませたアメリカはアジアからさらに多くの輸入をする。

 つまり、アジアとアメリカは経済面で共生関係にある。貿易や投資の自由が保持されていれば、(北朝鮮を除く)すべての国や地域がハッピーで、ことさらいがみ合う必要はない。

非現実的な完全自主防衛

 リーマン・ショックでアメリカの地位が一時的に沈むまでは、多くの中国人識者も共生関係を認めていた。「アメリカはアジアの安定を維持してくれる勢力」と言っていたものだ。

【参考記事】不機嫌な中国のアメリカ離れ幻想

 日本では「アジアはアジア人で」「アメリカには出て行ってもらう」といった根強い反米主義がある。そんなことをすれば、日本は中国の圧力に裸でさらされる。日本はアメリカ、中国、ロシアという軍事大国の間で完全自主防衛を実現する力はない。そのことを冷厳に見据えつつ、その中で最大限外交の自主性を確保していくしかない。

 アメリカにとって日本の価値は、「アジアにおけるアメリカの利益を維持していく上での最有力な足掛かり」だ。それを支えに、日本は賢く立ち振る舞うことが求められている。

[2016年4月12日号掲載]

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