最新記事

中国経済

中国指導部が捨てられないGDP成長率の追求という悪習

2016年4月4日(月)15時30分
アフシン・モラビ(本誌コラムニスト)

 確かに、中国は大なたを振るうのではなく、少しずつ雇用喪失に慣れていくべきだ。

 ここまではよかった。だが今後5年の成長率目標を6・5%とした点は、世界経済の成長と中国の「新常態(ニューノーマル)」に照らすと的外れなものだった。目標達成のために成長を急げば、過剰なインフラ建設や経済統計の数値改ざんさえ招きかねない。

 李と習近平(シー・チンピン)国家主席はそろそろ、目標達成のために成長率の数字を追い掛けるパターンを変え、持続可能な成長のための正しい目標を追求するべきだ。

【参考記事】「共倒れ」の呪文が世界に響くがうさんくさい中国経済脅威論

 習は大胆な汚職取り締まりで、これまでに10万人以上の共産党員を処分。対外的には、野心的な一帯一路(陸と海のシルクロード経済圏)構想を打ち出している。こうした行動は、彼が極めて頑固であることの証しだ。

 その同じ頑固さをもって今こそ、「成長率目標を宣言し、その達成に躍起になり、統計値を操作する」という中国の悪習を断つべきだ。世界の多くの機関投資家が、中国政府が発表する数字への信用を失っている。これは悪い兆候だろう。

 アジアと世界には力強い中国が必要だ。しかし海外の投資家たちの耳には「不安定、不均衡、不調和で持続不可能」という温の警告の言葉がまだ残っている。

 中国は成長率を追い掛けるのをやめて、将来に向けた最善の政策を追求していく――李が今回そう打ち出していたら、彼らの不安軽減に大いに役立っただろうが。

[2016年3月29日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米韓制服組トップ、地域安保「複雑で不安定」 米長官

ワールド

マレーシア首相、1.42億ドルの磁石工場でレアアー

ワールド

インドネシア、9月輸出入が増加 ともに予想上回る

ワールド

インド製造業PMI、10月改定値は59.2に上昇 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中