最新記事

中国経済

中国企業の資金繰りひっ迫、ネット金融依存強める

銀行よりも迅速に借り入れができるが高コストなP2P融資が拡大

2016年3月25日(金)09時48分

3月24日、中国企業は運転資本の現金化が難しくなり、手元の流動性が過去10年で最も乏しくなっていることがロイターの分析で分かった。写真は中国の国旗。北京で1月撮影(2016年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

 中国企業は運転資本の現金化が難しくなり、手元の流動性が過去10年で最も乏しくなっていることがロイターの分析で分かった。こうした企業はネット経由のP2P金融など、高コストでリスクの高い貸し手に頼らざるを得ない状況に追い込まれている。

 2015年決算を発表した上場企業を調べたところ、主に売掛債権と棚卸資産で構成される運転資本の現金化に要する期間は約170日だった。創業から10年以上の企業141社の平均は130日で、10年前の約1カ月から大幅に伸びた。売掛債権と棚卸資産の額はいずれも2006年以降で最高だった。

 こうした数字からは、中国企業の資金繰りがひっ迫の度を強めている様子が読み取れる。銀行は昨年、融資の焦げ付きが倍増し、景気減速に見舞われている中国企業への貸し付けに及び腰だ。

 銀行は、都市の雇用の80%、国内総生産(GDP)の60%を担う中小企業よりも国有企業への融資を優先する。そのため中国人民銀行(中央銀行)の金融緩和の効果も中小企業には及びにくい。

 ステンレス鋼メーカーの幹部は「支払いがなく、大きな影響を受けている。資本が不足し、他の資金獲得先を見付けださなければならない」と話す。

 蘇州市の岡野精密機械のように、 サプライヤーとも金融機関ともつながりの薄い中小企業は特に状況が厳しい。オーナーによると、顧客が支払いを行うまでの期間は1年前には1カ月ないし2カ月だったが今は2カ月から3カ月に延びている。そのため売掛債権が増えつつある一方で、従業員への給与支払いは先送りできない。

 このオーナーは銀行に融資を求めているものの、銀行側は多くの条件を持ち出し、融資を却下する口実を必ず見つけ出すとこぼす。「銀行から融資が受けられなければ親戚か友人に頼むしかない。それでもだめなら、マイクロクレジット会社か高利貸ししか残された手段はない」と肩を落としている。

 こうした借り手の需要に応えるべく、P2Pによるオンライン融資のような代替融資が拡大しつつある。P2P融資は今年1─2月の累計が2430億元(370億ドル)と、前年同期の690億元から急増した。調査会社Wangdaizhijiaによると昨年の累計は9820億元で、前年から4倍に増えた。

 P2P融資は銀行融資よりもコストは高い半面、迅速に実行される。流動性不足に陥った企業経営者にとってはスピードこそが命だ。

 オンライン融資会社、点融網のSoul Htite最高経営責任者(CEO)は「融資を受けられるかどうかの判定に3カ月も待つ必要はない」と話す。昨年の同社の融資残高は14年から10倍以上に増加したという。

 一方、企業の間では手早く現金を手に入れるため、未回収の債権を安値で売却する動きが広がっている。調査会社クレジットサイツによると、割引債権の比率は全体の46%と13年の20%から大幅に上昇し、調査を始めた11年以来で最高となった。

 (Adam Jourdan and Umesh Desai記者)

[上海/香港 24日 ロイター]

120x28 Reuters.gif
Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタルインフラ投資企業「デジタ

ビジネス

ネットフリックスのワーナー買収、ハリウッドの労組が

ワールド

米、B型肝炎ワクチンの出生時接種推奨を撤回 ケネデ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 5
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 6
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 7
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 8
    三船敏郎から岡田准一へ――「デスゲーム」にまで宿る…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中