最新記事

中国

香港「反中」書店関係者、謎の連続失踪──国際問題化する中国の言論弾圧

2016年1月6日(水)15時33分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 スウェーデン国籍の者を中国当局が拉致したとなれば、今度はスウェーデンと中国の間の外交問題となる。

 10月24日には、銅鑼湾書店を主管する元社長の林榮基氏が突然いなくなった。

 11月5日に林氏の妻に夫からの電話があった。「無事だ」という一言を残しただけで、それ以上は何もわからない。そこで妻はすぐに香港の警察に連絡したが、一般の「行方不明者」として扱われ、今もなお情報がないままだ。

 10月26日、巨流傳媒の株主で総経理を務める呂波氏と業務経理を務める張志平氏の二人がともに「消えた」。

 このときまだ「消えて」いなかった李波氏が香港の警察に連絡したが、やはり一般の失踪者として扱われ、未だ情報は何を得られていない。

香港保安局の対応

 今年1月2日になると、香港の保安局は初めて見解を発表し「現在、積極的に調査している。もし関係者が香港以外の地にいることが判明した場合は、その当該地域の当局と連携を取りながら救助を試みる」とした。

 しかしこれらの経緯から、中国当局によって連行されていることは明らかなので、果たして香港政府が北京政府の意向に反して、香港市民のために動いてくれるか否かは疑問だ。

香港のメディア関係者と大陸の民主活動家

 個人的なことを書いて申し訳ないが、イギリスのBBC中文網(網:ウェブサイト)は拙著『毛沢東 日本軍と共謀した男』に関して筆者を取材し、昨年12月25日、インタビュー記事を公開した。

 するとイギリスやアメリカを始め香港からも翻訳出版のオファーが殺到したのだが、驚いたのは北京にいる民主活動家から「記事を見ました」というメールが入ったことだった。

 BBC中文網のこの手の記事は中国大陸では検閲により削除されているはずである。「どのようにして見たのか?」と聞くと、「簡単さ。壁越えをしているから」と言う。「壁越え」とは「万里の防火壁」という中国大陸のファイアーウォールのことで、最近は技術が発達して、香港の禁書でも自由に見ることが出来るという。

 北京政府が警戒しているのは、このことだろう。

 たしかに銅鑼湾書店は、『習近平の情人(恋人、不倫相手)』というタイトルの本を出そうとしていたという噂は、早くから聞いていた。

 香港の出版社に、「銅鑼湾書店の失踪問題があるが、大丈夫か?」と聞いたところ、「中国当局の言論弾圧は非常に厳しくなっているが、自分たちは負けない。むしろ、力を貸してほしい」と言ってきた。

 大陸の民主活動家に今回の失踪事件に関して聞いたところ、「今はどこにでもスパイが潜り込んでいて、いったい誰が味方で、誰が敵なのか区別がつかないほどだ。まるで文革時代に戻ったようだよ」と嘆いていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スイス・スキーリゾートのバーで爆発、約40人死亡・

ワールド

台湾総統「26年は重要な年」、主権断固守り防衛力強

ワールド

再送トランプ氏、シカゴやLAなどから州兵撤退表明 

ビジネス

ビットコイン、2022年以来の年間下落 最高値更新
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 2
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 5
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 6
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 7
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 8
    「断食」が細胞を救う...ファスティングの最大効果と…
  • 9
    日本人の「休むと迷惑」という罪悪感は、義務教育が…
  • 10
    米中関係は安定、日中関係は悪化...習近平政権の本当…
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 9
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 10
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中