最新記事

貿易圏

TPPに「実需」戦略で対抗する中国

AIIBや一帯一路という「実需」、および二国間FTA等のカードが中国にはある

2015年10月8日(木)17時30分
遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)

TPP陣営 西側の価値観を共有する12カ国による「対中包囲網」 USTR Press Office-Reuters

 TPP大筋合意に対して、中国はAIIBや一帯一路という「実需」および二国間の自由貿易協定FTA等で対抗しようとしている。「あれは部長級の合意に過ぎないと」と、TPPの最終的実現性にも疑問を呈している。

中国は「TPPは対中国の経済包囲網」と認識している

 中国はTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)を中国に対する経済包囲網だと位置づけ、早くからAIIB(アジアインフラ投資銀行)や一帯一路(21世紀の陸と海の新シルクロード経済ベルトと経済ロード)を用意して、日米などによる経済包囲網形成を阻止しようとした。

 このたびのTPP参加12カ国による大筋合意を、中国の商務部(部:中央行政省庁。日本の「省」に当たる)関係者は、「あれは、たかだか部長級の合意に過ぎず、それぞれの参加国が自国に持ち帰って国の決議機関で賛同を取り付けなければならない」と言い放った。

 その例として、アメリカでは来年、大統領選挙があり、共和党としてはオバマ叩きと民主党下しにTPPの難点を強調して攻撃を始めるだろうから、米議会を通らない可能性があるとしている。

 またカナダでも10月19日に総選挙が行われることになっており、現政権のハーパー首相(親米保守党)が落選した場合、野党の新民主党が乳製品の市場開放に反対していることから、議会での賛同は得られないだろうと見ている。

 いずれも、TPP交渉が長引き大統領選まで持ち込んでしまったことが、痛手になるだろうと踏んでいるのだ。

 またTPP参加国のうち、オーストラリアとニュージーランドとは、二国間のFTA(自由貿易協定)をすでに結んでいるので、あとは少しずつFTAを増やしていこうと、TPPの完全成立までに切り崩していこうという考えも持っている。

 AIIBに関しては、今さら言うまでもなく西側諸国(特にG7)の切り崩しに成功しているので、習近平国家主席は10月20日にエリザベス女王の招聘を受けて訪英することを決めている。イギリスは2015年3月18日の本コラムでも詳述したように、中国に弱みを握られていて、少なくとも経済に関してはほぼ中国の言いなりだ。

 ヨーロッパを押さえておけば、「陸のシルクロード」と一帯一路に関しては、アメリカに圧力を与えることができると考えている。
海のシルクロードの拠点としては、10月5日の本コラム「インドネシア高速鉄道、中国の計算」で考察したように、何としてもインドネシアを押さえておけば、南シナ海からインド洋へ抜けていく海路を掌握することができる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:戦闘で労働力不足悪化のロシア、インドに照

ワールド

アングル:フロリダよりパリのディズニーへ、カナダ人

ビジネス

NY外為市場=ドル横ばい、米CPI受け 円は週間で

ビジネス

米国株式市場=3指数が週間で下落、AI巡る懸念継続
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 4
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    【インタビュー】「4回転の神」イリヤ・マリニンが語…
  • 7
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 8
    中国の砂漠で発見された謎の物体、その正体は「ミサ…
  • 9
    「ドルも弱い」なのになぜ、円安が進む? 「ドル以外…
  • 10
    機内の通路を這い回る男性客...閉ざされた空間での「…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベル…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中