最新記事

環境

中国が手に負えなくなったゴミの山

人口増に処理能力が追い付かず、各地で違法なゴミ埋め立て地が急増。深刻な汚染を招いている

2015年9月25日(金)12時14分
陳儀方

問題山積 中国各地で蓄積されたゴミは土壌や地下水を汚染している David Gray-REUTERS

 今年6月からというもの、北京郊外の長店村では掘削機やトラックがせわしなく動き回っている。作業員が懸命に除去しようとしているのは、4万5000立方メートルにも及ぶ大量の不法投棄ゴミ。河川からほんの20メートルのこの場所に何年にもわたって蓄積され、地下5メートルに達して地下水を汚染し続けているものだ。

 ここは、北京市街周辺のそこかしこに出没している1000カ所以上の違法なゴミ埋め立て地の1つにすぎない。環境問題の専門家は、これらの場所で未処理のまま廃棄されたゴミが土壌や大気、地下水に深刻な汚染をもたらすと非難している。

 90年代、中国各地の地方政府が正規の埋め立て処分場を建設して公害対策に乗り出した。だがこれらの公的施設は、拡大を続ける都市人口が生み出す大量のゴミを収容し切れなかった。住民たちは不法投棄場所に次々とゴミを捨て始め、その多くは200トン超のゴミを抱える。これらが今まさに時限爆弾と化していると、専門家らは警告する。

 08年の北京オリンピックを控えた06年、北京市当局は総額50億元を費やして不法投棄場所の浄化に着手した。だが長店村を含む数十の投棄場所は、いまだ作業中か未着手の状態だ。

 北京以外の多くの都市では、不法投棄場所は拡大を続けている。専門家によれば中国各地の都市部には1万以上の違法ゴミ捨て場があり、多くが数十年にわたって使用されているという。

 正規の埋め立て地の場合は、周囲を特殊素材で覆って汚染物質を土壌に染み込ませない構造にするよう、環境規制当局は求めている。有毒ガスの排出を抑え、ゴミを地下水から遮断する設備も必要だ。

 だがその一方で、規制の及ばないおびただしい数のゴミ捨て場が、北京周辺に次々と出没している。これらを野放しにしていては、大気汚染や火災、さらには爆発が起こる可能性もある。

 広東省環境衛生研究所の研究者である鄭曼英(チョン・マンイン)は広州市南部の不法投棄場所2カ所を5年にわたり調査した結果、地下水や土壌に深刻なレベルの汚染物質が見つかったという。その中には酸化窒素やリン、鉛、カドミウム、そのほかの有害重金属も含まれていた。

北京以外は対策も進まず

 こうした不法投棄場所の対策に中国で初めて乗り出した都市が、北京だった。北京市環境衛生設計科学研究所の衛潘寧(ウェイ・パンニン)所長によれば、06年の調査で北京とその周辺には1011の不法投棄場所があり、総面積は1300ヘクタールで、7700トン以上のゴミが積み上げられている。ほとんどが家庭ゴミと建築ゴミだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

宇宙船オリオン、4人乗せ地球に無事帰還 月の裏側を

ワールド

アングル:イラン戦争でインフレ再燃、トランプ政権に

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、中東停戦維持期待で安全資産

ワールド

イラン交渉団がパキスタン到着、レバノン停戦要求 米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 4
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 5
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 6
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 7
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 8
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 9
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 10
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 7
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 8
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 9
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 10
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中