最新記事

中ロ関係

毛沢東の亡霊がモスクワに? 中ロ激突前のはかない蜜月

欧米諸国欠席でも中ロは相思相愛に努めたが、冷戦以来の因縁はやがてシルクロードで炸裂する

2015年6月1日(月)11時50分
楊海英(本誌コラムニスト)

対独戦勝70周年記念式典で歓談する習近平とプーチン Ria Novosti-REUTERS

 社会主義国に生まれ育ったので、モスクワの「赤の広場」で繰り広げられる軍事パレードの映像を子供の頃から毎年のように見てきた。とてつもない広大な舞台だろうと想像していたが、実際に現場に立ってみると、意外と小さかった。

 レーニン廟の近くに日本人の共産主義者、片山潜の墓もあったのには驚いた。さすがは国際共産主義の大本営だな、と感心したものである。「一つの亡霊、共産主義の亡霊がヨーロッパをさまよっている」とは、マルクスの予言だった。その後、20世紀は確かに地球の半分が赤色に染まったが、片山潜の母国は免れた。

 共産主義思想が世界最初の社会主義国ソ連から消え去って、四半世紀が過ぎようとしている。そんななか、今月9日のロシア対独戦勝70周年記念式典の軍事パレードに何と、中国の毛沢東元主席が「出現」した。モスクワ近郊のイワノボ国際児童院から参加した中国人の子供らが「偉大な領袖、毛祖父(おじい)様の肖像画」を掲げて行進したのだ。

 この児童院はかつて、世界各国から革命家の子供たちを受け入れる施設だった。毛沢東の子息、毛岸英も長く滞在したことで知られている。毛岸英は帰国後に中国人民解放軍の将校となり、朝鮮戦争で戦死した。一方で、中国の介入により半島の半分で天下の支配者となった金王朝3代目の「若き皇帝・金正恩(キム・ジョンウン)」はなぜか、今月の華やかな行事に姿を見せなかった。

 毛沢東の「亡霊」が現れたのには、ジョージア(グルジア)の靴屋の息子スターリンも天国でびっくりしたのではないか。

歴史的に相手を信用できない中ロ両国

 スターリンは、磨いたことのない黒い歯をした毛がとにかく嫌いだった。ひたすら中国西北部の奥地に潜んで日中戦争の指揮を執る毛は、日本軍と前線で戦うのを避けているかのように見えた。

 スターリンが支持していたのは、日本軍と死闘を繰り広げた国民党政府だった。予想に反して、毛は中国全土を征服。毛がモスクワを訪ねて表敬の挨拶をしようとした際も、スターリンは1週間も面会を拒絶して冷遇したことはよく知られた事実だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

林官房長官が政策発表、1%程度の実質賃金上昇定着な

ビジネス

アングル:FRB「完全なギアチェンジ」と市場は見な

ビジネス

野村、年内あと2回の米利下げ予想 FOMC受け10

ビジネス

GLP-1薬で米国の死亡率最大6.4%低下も=スイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中