最新記事

社会

ロシアにはダメ男しかいない!

残っているのは大酒飲みか怠け者のろくでなし男ばかり。独り身女性の不満が爆発

2014年12月26日(金)12時00分
アンナ・ネムツォーワ

夜のお楽しみ 男性ストリッパーと女性客(モスクワ) Thomas Peter-Reuters

 猛烈に湯気を立てているケトルに負けず劣らず、キッチンで2人の女性が交わす会話も熱を帯びていた。モスクワ郊外の12階建ての集合住宅でエレーナ・ラザレワ(51)と娘のエカテリーナ(29)は、恋人や夫がいない寂しさを語り、ロシアの男たちへの不満をぶちまける。

 2人の間で繰り返されてきた話題だ。恋をして結婚したいと思っているけれど、「いい男がいない」と、管理職として働くエレーナが言い、エカテリーナもうなずく。

 モスクワの街を歩き、カフェやレストランをのぞき、アパートを訪れると、こういう女性が至る所にいる。恋人や夫のいない女性たちが集まって一緒に過ごしているのだ。

 たいていは高いハイヒールに、オペラかファッションショーに出るような服装をしている。若くて美しい女性が男を「ハンティング」しようとするときの最近定番のファッションだと、ロシア議会のワディム・デンジン議員は言う。「そういう女性たちは、経済力を最優先基準に男を品定めしている」

 しかし、多くの女性は結婚相手探しに苦労している。「ロシアの男は怠け者で、テレビやパソコンの前で酒を飲んでばかり。女性を楽しませることを考えもしない」と、デンジンは言う。ロシアの多くの女性は、この指摘に心から同意するだろう。

 エレーナは、夫と離婚したとき、ほっとしたと言う。「まるでほかの惑星から来た異星人だった」。ベッドでは? 「幸せと思ったことは一度もない......我慢していた」。夫婦が離婚したとき、エカテリーナは9歳だった。酔っぱらった夫が妻を怒鳴り、夫婦げんかが絶えないというのが、ロシア社会で最もよくある家族の姿だ。エレーナ母娘の家もそんな家庭だった。

 離婚して20年。エレーナは、今も次の相手を探している。ただし譲れない条件がある。「経済的にも人間的にも納得できる相手でないとお断り。でも、そんな男がどこにいるっていうの? 恋人や妻がいない男なんて残っていない」

 エレーナによれば、ロシアのほとんどの男性は若いときに酒に溺れたり、軍隊で人が変わってしまったり、犯罪者すれすれになったりする。
実際、ロシア社会には男性が足りない。最近、ロシアの国家統計委員会が発表したデータによると、ロシアでは女性人口が男性より1050万人も多い。ロシア議会のタチアナ・モスカルコワ議員によれば、ロシア男性の平均年齢が36歳なのに対し、女性は41歳だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:日銀利上げ容認へ傾いた政権、背景に高市首

ビジネス

「中国のエヌビディア」が上海上場、初値は公開価格の

ワールド

米司法長官、「過激派グループ」の捜査強化を法執行機

ワールド

トランプ政権、入国制限を30カ国以上に拡大へ=国土
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 7
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 8
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 9
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 10
    【トランプ和平案】プーチンに「免罪符」、ウクライ…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中