最新記事

コロンビア

「セックス拒否」は政治も動かす

権力のある男たちも、妻やパートナーに「足を組まれて」しまったら言うことを聞かざるをえない

2013年11月6日(水)17時31分
ジョン・オーティス

男の弱味 セックス・ストライキは世界各地で起きている Fabrizio Bensch-Reuters

 セックスは商品になる。ではセックス拒否は? これも男たちを動かすのに役立つようだ。

 コロンビア南西部、ナリーニョ県バルバコアス市の女性たちがフニン市につながるでこぼこ道の整備を求めて、夫やパートナーとのセックス拒否のストライキを始めたのは11年6月のこと。しばしば起きる洪水や土砂崩れで閉鎖されていなければ、約56キロの道のりを行くのに最大で24時間かかった。

「男たちは最初すごく怒った」と、バルバコアスの裁判官であり、セックス拒否のシンボルである「足組み」運動の広報担当を務めるマリベル・シルバは言う。「でも、それが奏功した」

 女性たちの抗議はバルバコアスの男たちをも巻き込み、面目を失った政府の役人を動かし、国と県と市政府が道路舗装の資金拠出を約束するまで続いた。11年後半にはコロンビア軍の技師たちが舗装工事に取り掛かったが、作業中の兵士1人がゲリラ攻撃により死亡。建設資材や機器を確保することにも時間が掛かり、舗装作業はすぐに一時休止になった。

 しかし最近、軍の技師たちが作業を再開。工事を監督するリカルド・ロケ大佐よれば、約8キロの舗装が終わったという。

ある妊婦の死が女性たちを立ち上がらせた

 コロンビアでは50年前から、左翼ゲリラのコロンビア革命軍(FARC)が政府軍との戦いを展開。ここ10年ほどはアメリカが支援する軍事攻撃のせいでFARACは弱体化しているが、それでも活動は続いている。

 FARCと政府の戦いのせいで、多くのコロンビア人が陸路で旅行することをためらい、地方都市に行くにも飛行機を使っている。そのため新たな道路を作れという政府に対する圧力は減り、公共事業費が軍事費に回されることもあった。新しい道路建設が承認されても、ゲリラからの攻撃リスクがあるために計画は大幅に遅れる。

 例えばバルバコアスの道路は数十年前に建設されたが、補修はときどきしか行われていない。ロケ大佐によれば、02〜09年で4つの土木会社が道路補修の契約をしたものの、すべての会社がFARCの攻撃を受けて手を引いた。

 バルバコアスは人口3万5000人。良い病院や役所がそろっている県都パストに行く道はかつてはきちんと舗装されていたが、今や多くの場所が泥やぬかるみだらけになっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など

ワールド

アングル:失言や違法捜査、米司法省でミス連鎖 トラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 7
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中