最新記事

エジプト

ムバラク保釈は軍の陰謀

かつての独裁者が保釈されれば、暫定政権とデモ隊の対立が一段と激化しかねない

2013年8月22日(木)17時03分
プリヤンカ・ボガーニ

新たな火種 汚職などの罪で収監されていたムバラク元大統領 Reuters

 7月に軍のクーデターで排除されたモルシ前大統領の支持者に対する暫定政権の弾圧が激しさを増しているエジプトで、「過去の人」に注目が集まっている。30年間に渡ってエジプトに君臨し、2011年2月に「アラブの春」の民主化デモで辞任に追い込まれたムバラク元大統領(85)だ。

 モルシの出身母体であるムスリム同胞団などによって失脚させられたムバラクは、退陣後、反政府デモ参加者の殺害を命じた罪や汚職など複数の罪で起訴されて収監されていた。だが、カイロの裁判所は8月21日、ムバラクの保釈を命じる決定を下した。

 釈放される日程については諸説あるが、ムバラクの弁護士は「残されているのは事務手続きのみで、48時間以内に完了する見通しだ。今週末までには自由の身になっているはずだ」と語る。保釈後は自宅で監視下に置かれるとういう。

 今回の保釈決定には軍主導の暫定政権の意向が働いたとみられ、ムバラク時代を嫌悪するモルシ支持派との対立に一段と拍車がかかる恐れもある。モルシ派はこの保釈を「ムバラク政権時代への回帰の証拠」とみなすため、さらなる混乱が起きかねない、人権派弁護士のナッサー・アミンは語っている。

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

マスク氏とフアン氏、米サウジ投資フォーラムでAI討

ビジネス

米の株式併合件数、25年に過去最高を更新

ワールド

EU、重要鉱物の備蓄を計画 米中緊張巡り =FT

ワールド

ロシアの無人機がハルキウ攻撃、32人負傷 ウクライ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 10
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中