最新記事

治安

パキスタン総選挙をテロの暗雲が覆う

国民の支持でシャリフ元首相が勝利しても命の保証はない

2013年5月14日(火)18時27分
山田敏弘(本誌記者)

恐怖の選挙戦 親欧米の候補者が名指しで標的に(写真はシャリフ陣営) Damir Sagolj-Reuters

 パキスタンではこの3月、ザルダリ政権が建国以来初めて選挙による文民政権として5年の任期を全うした。今月11日に予定されている総選挙は文民政権から文民政権へバトンタッチされる歴史的選挙だが、この国の実態は平和には程遠い。選挙期間中、自爆テロなどの死者が既に50人以上に上っているのだ。

 パキスタン・タリバン運動(TTP)などイスラム過激派組織が親欧米の候補者を容赦なく狙っている。特に標的と名指しされているのが、親米のザルダリ大統領率いる与党パキスタン人民党(PPP)。人気が低迷しているのに、テロ警戒で思うように活動できていない。

 一方でシャリフ元首相や元クリケット選手のイムラン・カーンは、テロに屈しない姿勢をアピールしている。最新の世論調査によれば、シャリフ率いる最大野党パキスタン・イスラム教徒連盟シャリフ派が最も優勢だ。

 もっとも、対テロ戦争の最前線でテロリストの巣窟となって久しいパキスタンで選挙に勝利しても、命の保証はない。

 治安だけでなく、電力不足や教育、雇用など政策課題は山積している。だが、新たに生まれる文民政権の前途は危険に満ちている。

Damir Sagolj-Reuters

[2013年5月14日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米耐久財受注、10月は2.2%減に反転 コア資本財

ワールド

米当局、中国DJIなど外国製ドローンの新規承認禁止

ビジネス

米GDP、第3四半期速報値は4.3%増 予想上回る

ワールド

ベトナム次期指導部候補を選定、ラム書記長留任へ 1
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 5
    砂浜に被害者の持ち物が...ユダヤ教の祝祭を血で染め…
  • 6
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 7
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 8
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中