最新記事

パレスチナ

アラファト毒殺説の真相は

毒殺かエイズか脳卒中か? 04年にフランスで死亡して以来、イスラエルによる暗殺も疑われている

2012年8月29日(水)15時33分
ノガ・ターノポルスキー

謎は解けるか 8月末、フランス当局は本格的捜査に乗り出した(写真はアラファトの死を悼むパレスチナ人) Ibraheem Abu Mustafa-Reuters

 04年11月11日、パレスチナ自治政府のアラファト議長がフランスで死亡したが、死因は発表されなかった。そして8年後の今、死亡直後からささやかれていた「暗殺説」が再燃している。

 中東の衛星テレビ局アルジャジーラは先週、アラファトの下着に付着した尿の染みからポロニウム210が検出され、毒殺の可能性が浮上したと報じた。

 この説が証明されれば、状況は一変する。多くのパレスチナ人は今でも、アラファトはイスラエルによって毒殺されたと信じているのだ。

 ポロニウムは、06年にロンドンで元KGB職員アレクサンドル・リトビネンコの毒殺に使用された放射性物質。アルジャジーラによれば、イスラエルは希少なこのポロニウムを保有しているという。

 アラファトの遺品を分析したのはスイス・ローザンヌの放射線物理学研究所だ。広報担当者はこう言う。「検出されたポロニウム210の量は通常予想されるレベルより高い。だがアラファトの死の直前の症状は、ポロニウム中毒の症状と一致しない。結論を出したいなら、遺体を調べるしかない」

 パレスチナ自治政府はそのつもりだ。アルジャジーラの報道の後、政府は調査のためにアラファトの遺体を掘り起こすと発表した。

 一方のイスラエルは診療記録が重要だとしているが、記録の公表は予定されていない。「真実は診療記録にある。アラファトはフランス軍の病院で死んだ。記録はフランス当局と彼の妻が持っているはずだ」と、イスラエル外務省の報道官は言う。

 米ニューヨーク・タイムズは05年にアラファトの診療記録を入手し、死因は「特定できない感染症に起因する出血性障害から生じた脳卒中で、噂されているような毒殺やエイズの可能性は考えにくい」と報じた。

 アラファトの主治医だったアシュラフ・アル・クルディは07年にヨルダンのニュース番組で、アラファトの血液からHIVウイルスが見つかったことを明かした。だがアラファトはエイズで死んだわけではなく、ウイルスは死の直前にアラファトの血管に注射されたものであり、本当の死因は毒殺だと主張した。

 同じ時期にアルジャジーラは生放送でアル・クルディにインタビューした。しかしクルディがHIVウイルスの件に触れるや否や、放送を打ち切った。

From GlobalPost.com

[2012年7月18日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮が弾道ミサイル発射と日韓が発表、前日に続き

ワールド

米イラン合意、日本政府・与党は楽観視せず 「攻撃再

ワールド

豪中首脳が電話会談、地域のエネルギー安保巡り協力強

ビジネス

インド中銀、政策金利据え置き イラン戦争で経済見通
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライナ軍司令官 ロシア軍「⁠春の​攻勢」は継続
  • 3
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命防衛隊と消耗戦に
  • 4
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 5
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 6
    「王はいらない」800万人デモ トランプ政権への怒り…
  • 7
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 8
    【後編】BTS再始動、3年9カ月の沈黙を経て──変わる音…
  • 9
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 10
    5日間の寝たきりで髪が...ICUに入院した女性を襲っ…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 7
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 8
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 9
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 10
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中