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正念場サルコジが狙う2匹目のドジョウ

国内での人気低迷に苦しむ大統領は、G20の新議長役で得点を稼ぎたいところだが、EU議長役で外交手腕を発揮した08年のようには行かない

2010年11月29日(月)14時57分
トレーシー・マクニコル(パリ)

崖っぷちの賭け サルコジは年金改革問題などで低迷する支持を取り戻せるのか Benoit Tessier-Reuters

 2012年に行われる大統領選では再選が危ぶまれるフランスのサルコジ大統領。大規模な反発を招いた年金改革の法制化を実現した今、失地回復に乗り出したようだ。

 まずは保守層の支持基盤を強化するため、内閣改造に着手。07年の大統領就任時、派手に連携してみせた左派の閣僚たちをあっさり政権から追い出した。

 さらにG20の議長として1年間の任期が始まったことから、国際舞台で際立つ成果を挙げて国内での支持率回復を狙っているらしい。08年のEU議長就任で指導力を発揮したときと同じ手段だ。

 しかしカリスマ性を前面に押し出して支持を得るという作戦は、厳しいスタートを切った。

 国民が高い期待をかけてきた内閣改造は結局、サルコジの弱点を露呈する結果に終わった。公言していた新首相の指名はなく、サルコジが支持を必要とする中道派の人々の怒りを買った。さらにシラク前大統領の右派仲間を入閣させたことで、「過去との決別」という自身の哲学まで捨てたと見なされてしまった。

08年にはEU議長役で人気を回復

 G20の議長として国民の喝采を得られるという保証もない。確かに08年にEU議長を務めたときは、既に死に体だった米ブッシュ政権から国際政治の主役の座を奪い取った。ロシアのグルジア侵攻では素早く停戦をまとめ、世界的な金融危機が発生したときにも迅速な対応を取った。

 だが現在の米オバマ政権は中間選挙で苦杯をなめたとはいえ、死に体には程遠い。しかもサルコジがG20の議長として、例えば国際的な通貨制度改革のような重要な目的を達成しようとしても、アメリカや中国を従わせるのは不可能だ。そのことは、彼自身もよく分かっている。

 EU議長時代に、サルコジが予期せぬ世界的危機に臨機応変に対応し、その即応力で名を上げたのは事実。大統領選が迫る今、サルコジは自ら進んで、世界の大問題を取り仕切る役目を買って出たわけだが、リスクも大きい。なかなか勇気の要る賭けだ。

[2010年12月 1日号掲載]

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