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エジプト総選挙

ムバラク政権の前に自滅したムスリム同胞団

ババク・デガンピシェ(バグダッド支局長)

2010年11月25日(木)16時07分

 エジプトでは11月28日に人民議会選挙が迫るなか、穏健なイスラム原理主義で、政府に批判的な野党勢力のムスリム同胞団の足並みが乱れている。無理もないだろう。これまで600人近いメンバーがムバラク政権に拘束され、さらに多くのメンバーが脅迫を受けている。

 さらにイスラム同胞団は、より根本的な問題にも直面している。ある幹部の話では、議会選挙をボイコットするかどうかで組織内が真っ二つに割れている。専門家によれば、議会での影響力をめぐって内輪もめが広がり、そもそも国政に参加し続けるべきなのかという議論にまで及んでいるという。

 既にムスリム同胞団に属する議員のおよそ4分の1が、不出馬を表明している。支持者たちの中には、同組織の最大の強みだった福祉事業を行う力にさえ疑問を抱き始めた人もいる。

 ムスリム同胞団の幹部は、ムバラク政権が同組織を排除しようとしていると非難している。しかし政府が国際選挙監視団の受け入れを拒否していることを考えれば、仮に内輪もめを収拾して組織の統制を取り戻したとしても、選挙で低迷する可能性が高いだろう。

[2010年12月 1日号掲載]

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