最新記事

ジンバブエ

独裁者ムガベが金正日に送る「ノアの箱舟」

つがいで贈られるゾウやキリンの赤ちゃんは長旅と北朝鮮の劣悪な環境に耐えられない

2010年7月1日(木)15時07分
現地特派員(ジンバブエの報道規制のため匿名)

 ジンバブエのムガベ大統領が、北朝鮮の独裁者仲間、金正日総書記に野生動物のつがいを乗せた「ノアの箱舟」を送ろうと計画している。国内の環境保護活動家はこれに反発し、計画を取りやめるよう求めている。

 北朝鮮に送られる赤ちゃんゾウやキリン、サイなどは、当初は金正日への贈り物だと言われていたが、国営メディアはその後、動物園で一般公開されると報じた。

 専門家は動物が北朝鮮で生存できないことを危惧していて、地元インディペンデント紙では6月、計画の中止も報じられた。北朝鮮までの1万キロ以上の空路は動物にとっては大変な負担。北朝鮮の寒冷で劣悪な環境にも耐えられないと専門家は指摘する。「寒くて施設も粗末な北朝鮮に野生動物を送るのは非人道的だ」と、ジンバブエ動物保護基金のジョニー・ロドリゲス理事長は言う。「国民の面倒すらまともに見られない国に動物の世話ができるのか?」

 80年代にもムガベはつがいのサイを北朝鮮に送ったが、2頭とも数カ月後に死んだ。ムガベと北朝鮮は長らく親密な関係を続けていて、ジンバブエ陸軍の訓練を北朝鮮が手掛けたこともある。ムガベを批判する勢力は「ノアの箱舟」計画を、国の財産を私物化するムガベの圧政の一例と非難している。

[2010年7月 7日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EUと米、ジョージアのスパイ法案非難 現地では抗議

ビジネス

EXCLUSIVE-グレンコア、英アングロへの買収

ワールド

中国軍機14機が中間線越え、中国軍は「実践上陸訓練

ビジネス

EXCLUSIVE-スイスUBS、資産運用業務見直
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中