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武力紛争で死亡率が低下する不思議

2010年2月1日(月)15時26分
バレット・シェリダン(本誌記者)

 紛争は地獄には違いないが、地獄は健康に悪いとばかりも言えないらしい。ある最新の調査によると、70年代以降に起きたほとんどの武力紛争の期間中、死亡率が実際には低下していたことが分かったという。

 紛争そのものが平均寿命を延ばすわけではない。死亡率が低下している主な理由は、紛争によって貧困国における国際的な人道支援活動に弾みがつき、短期間で衛生状態が奇跡的に改善するような取り組みがなされたことにある。

 例えば98年にその後10年間続く内戦が始まったコンゴ(旧ザイール)では、97年時点では、はしかの予防接種を受ける子供はわずか20%だったが、07年までに接種率は80%に上昇した。栄養対策や蚊帳の配布といったほかの取り組みについても、同様の報告がある。

 「難民キャンプでの生活は決して楽しいものではないが」と、調査報告書の代表執筆者であるカナダのサイモン・フレーザー大学のアンドルー・マック教授は言う。「こうした難民キャンプの多くで、紛争前に比べて死亡率が改善している」

 もちろん、紛争は称賛できるものではない。しかし、この調査結果を見る限り、紛争は犠牲ばかりでなく、意外な効用ももたらすようだ。

[2010年2月 3日号掲載]

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