最新記事

女性首相

日本初の「女性首相」は生まれる?...「高く硬いガラスの天井」を破るための「条件」とは

TO BREAK THE GLASS CEILING

2024年09月04日(水)16時05分
北島 純(社会構想大学院大学教授)

デンマークのメッテ・フレデリクセン首相

デンマークのメッテ・フレデリクセン首相 ALEX SOCHACKIーSIPA USAーREUTERS

「意志の力」と「モメンタム」

ここで、スウェーデン・イエーテボリ大学を拠点とするV-Dem研究所(デモクラシー多様性研究所)が公表している年次報告書(24年版)を見てみよう。

この報告書はさまざまな指標を用いて、世界179カ国をリベラルデモクラシー国家(G7各国、北欧諸国など)、選挙デモクラシー国家(マレーシアやインドネシア、スリランカなど)、選挙権威主義国家(ロシアやインドやタイなど)、閉鎖権威主義国家(中国や北朝鮮やイランなど)という4つのカテゴリーに分類している。


このうち日本が分類されている「リベラルデモクラシー国家」は32カ国ある。首相を16年以上務めたドイツのアンゲラ・メルケルのように、歴史に名を刻む女性首相がきら星のごとくそろっているように思われるかもしれない。

ところが32カ国における女性首相の実態を検討すると、そうとも言えないことが分かる。

32カ国中、最高権力者としての女性首相をこれまでに複数人出しているのは、わずか7カ国にすぎない。

3人の女性首相を輩出した国は、マーガレット・サッチャー首相(79年)とテリーザ・メイ首相(16年)とリズ・トラス首相(22年)のイギリス、ジェニー・シップリー首相(97年)とヘレン・クラーク首相(99年)とジャシンダ・アーダーン首相(17年)のニュージーランド、そしてアンネリ・ヤーテンマキ首相(03年)、マリ・キビニエミ首相(10年)、サンナ・マリン首相(19年)のフィンランドという3カ国だけだ。

2人の女性首相を出した国はやや増えて、前述のヘレ・トーニングシュミット首相(11年)とメッテ・フレデリクセン首相(19年)のデンマークと、ノルウェー、アイスランド、ラトビアの4カ国になる。

これら女性首相を複数人出した7カ国はいずれも英連邦または北欧の国家だ。二大政党制が定着し政権交代可能な政治状況下で、野党時代に党首になって選挙で勝利して首相になるか、ジェンダー平等な政治文化の下で是々非々で首相に選出されるのが典型的なパターンだ。

複数の女性首相が誕生しているということは、デンマークのフレデリクセンがトーニングシュミット首相に引き立てられたように、「女性首相という経験」が継承され蓄積され得ることを意味するが、その経験はわずか7カ国でしか享受されていないのである。

しかもイギリスですら、サッチャー退陣後、次の女性首相メイが生まれるまでに四半世紀の歳月を要している。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

EXCLUSIVE-米軍、中東に戦闘機追加配備 イ

ワールド

米、エルサレムの大使館を18─20日に閉鎖へ 治安

ワールド

インド・カナダが首脳会談、2年間の緊張関係を修復へ

ワールド

ウクライナ各地に大規模攻撃、18人死亡 首都の死者
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 3

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 4

    なぜメーガン妃の靴は「ぶかぶか」なのか?...理由は…

  • 5

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    なぜメーガン妃の靴は「ぶかぶか」なのか?...理由は…

  • 5

    ホルモンを整える「ヘルシーな食べ物」とは?...専門…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    メーガン・マークル、今度は「抱っこの仕方」に総ツ…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:コメ高騰の真犯人

特集:コメ高騰の真犯人

2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る