最新記事

マタニティ

「母親の自覚が足りないッ!」...海外通販サイトで見つけたマタニティドレスに思わず私もツッコミを入れた

2023年07月04日(火)11時10分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

私はこの反応にどうしても納得がいかなかった。あとからだんだん腹が立ち、「母親の自覚とは具体的に何のことか、あなたは24時間365日、母の自覚を持ってお暮らしなのか、私は自覚がないのではなく、持ったうえで選んでいるのだ、そのふわっとした実体のない言葉で、どれだけ多くの女性がこれまで苦しんできたと思っているのか?」という内容を50枚くらいオブラートに包んでメールしてしまったが、返事はなかった。

社会に決めつけられることへの抵抗

自覚というのは常に「n=1」の事象であって、他人に押し付けられるようなものではないはずなのに、なぜ外野がこうも介入してくるのだろう。
  
「それ、一生続くからね」と、子どもの福祉に関わるNPOを運営するヨシノちゃんは言った。

「妊娠した途端にさ、ママであることを求められるんだよね。ママっていうカテゴリに入れられてさ、一生、戻ってこれない感じ、ハイあなたはこっちのトラック走ってねって、出世からもキャリアからも遠ざけられて、ちょっとでもママらしくないことしたら『自覚がない!』って怒られんの。

私なんかさ、妊娠を公表した途端に『もうママなんだから、誰かにNPO譲りなよ』って言われたんだよ。余計なお世話だよ。

そんで子ども産んだら産んだで、『ママになったから、この事業はじめたんですね』とか言われるんだよ。独身時代からやってるっつーの!」

私はおいおいと泣いた。社会が勝手に結んだ「母」像に、自己が丸ごと回収されてゆく感じ。これまでの「私が私」であった世界と「ママA」としての世界のはざまで、行き場がなくなったようなそんな心細さ。

この感じ、何かに似ていると思ったら、ジブリ映画の「千と千尋の神隠し」で、主人公の千尋が湯婆婆に名を奪われ、湯屋で働かされはじめるあのシーンなのだった。
  
「いいかい? お前の名は今日からママだ。ママなんだよ」

──そうして女だけのコミュニティに閉じ込められたまま、一生戻ってこられないんじゃないだろうか。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、円は日銀の見通し引き下げ受

ビジネス

アップル、1─3月業績は予想上回る iPhoneに

ビジネス

アマゾン第1四半期、クラウド事業の売上高伸びが予想

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 3

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 4

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 5

    話題の脂肪燃焼トレーニング「HIIT(ヒット)」は、心…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 3

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 4

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 5

    タンポンに有害物質が含まれている...鉛やヒ素を研究…

  • 1

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門

特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門

2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語