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循環型経済

使い古しの割り箸が家具や生活雑貨に、寿司好きな木材専門家のアイデア

2021年01月13日(水)15時30分
松丸さとみ

使い古しの割り箸を生活雑貨や家具などとして商品化した...... CHOPVALUE

<使い古しの割り箸を、どうにか活用できないかと考えたカナダ在住の木材エンジニアが、循環型経済(サーキュラー・エコノミー)の一端を担うスタートアップ企業「チョップバリュー」を立ち上げた...... >

これまでに3200万本以上をリサイクル

割り箸がもったいないなと思ったことはないだろうか。寿司が大好きだというカナダ在住のフェリックス・ボック氏は、わずか数十分使ってごみ箱に捨ててしまう割り箸を、どうにか活用できないかと考えた。そこでバンクーバー中から使い古しの割り箸をかき集め、生活雑貨や家具などとして商品化するに至った。1月4日の時点で、これまで3200万本以上の割り箸を集め、リサイクルしたという。

ドイツ出身のボック氏はカナダのブリティッシュコロンビア大学の博士課程で、建材としての竹について研究していた。本業は木材エンジニアであり大工だという同氏にとって、割り箸は貴重な資材だ。北米では、割り箸の90%が竹でできているという。当時、寿司を食べるたびに、使い終わったら捨ててしまう割り箸を、もったいないと感じた。

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「チョップバリュー」創設者フェリックス・ボック氏 CHOPVALUE

ざっと計算したところ、バンクーバーだけでも1日に10万本の割り箸がごみとなっていることが分かった。ボック氏は英ガーディアン紙に話す。「これらの割り箸は、(中国から)1万キロほどかけて手元に運ばれてきたのに、食卓でわずか20〜30分使われるだけ。使い終わったからって、気持ちよく捨てられるわけはありません」

そこで同氏は、これを使って何かを始められないかと考えた。そのアイデアから2016年、リサイクルした割り箸に新たな命を吹き込んで循環型経済(サーキュラー・エコノミー)の一端を担うスタートアップ企業「チョップバリュー」を立ち上げた。

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CHOPVALUE


週35万本の割り箸がごみから商品へ

まずはバンクーバー中の飲食店にリサイクル用のごみ箱を置かせてもらい、使用済みの割り箸を集めることにした。現在は、レストラン数百軒の他、ショッピング・センター、空港、大学から、週35万本の使用済み割り箸を集めているという。これらは、ごみ集積場に埋められる運命にあった割り箸だ。

集めた割り箸は、圧力をかけてタイル状にした後、水性樹脂でコーティングし、高温乾燥させてから加熱プレス機にかける。6時間にわたるこの工程で洗浄・消毒されるため、水や化学物質を使った消毒を行う必要はないという。こうして出来た木材は、タブレット・スタンドやテーブルの天板など、生活雑貨や家具に生まれ変わる。

同社ウェブサイトでボック氏は、割り箸を使った商品は、オーク材やカエデ材よりも頑丈で、長持ちすると話す。商品は同社サイトの他、アメリカの大手百貨店チェーン、ノードストロームでも販売している。ガーディアンによると、例えば在宅ワーク用のデスクの天板には、9600本の割り箸が使われている。

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