最新記事

ビジネス

一泊2000ドルも。危機でも成長する高級ホテルの未来型「おもてなし」モデル

One Hotel’s “Quarantine Package”

2020年05月15日(金)16時50分
クリスティーナ・コーテルッチ

――客の注文に困ることは?

ただで泊まれるかという問い合わせが多くてちょっと驚いた。コロナウイルスと戦う医療従事者には無償で泊まってもらっているので、公的サービスだと思われたようだ。

――病院に移送された客は?

今のところいない。

――検査を受けた人は?

いる。検査料500ドルは高過ぎるというクレームもあったが、医師と看護師が来てくれて外出せずに検査を受けられるのだから、決して高くない。ウイルス検査については政府のルールに従い、高リスクグループで、症状がある人のみに行う。希望すれば誰でも受けられるわけではない。

――感染防止のためにどんな対策を取っているか。

通常は毎日メイドが清掃に入るが、今は要望がある場合のみとし、(清掃スタッフと)距離を取るよう客に要請している。清掃を行うのは(外注の)専門業者で、手袋とマスクをし、特殊な作業服を着るなど感染防止を徹底している。

それと宿泊客がチェックインする前にあらゆる場所を2度消毒している。

――検査で陽性になった人は?

いない。検査を受けた人も少ないが、全員陰性だった。

――ル ビジューの従業員が客と接触することはないのか。

従業員は通常、客と接触しない。チェックインなどの手続きは全てオンラインで行っている。客はコード番号を受け取る。普段は運転手に頼んで(フロントで)チェックインする客もいるが、今はフロント業務はやっていない。

――自炊したくない人はパーソナルシェフを呼べる?

自主隔離の場合のみ呼べる。30日間滞在して、毎日シェフに来てもらった客もいる。

――贅沢な自主隔離をする客のために、清掃スタッフやシェフを感染リスクにさらすのは問題ではないのか?

外部のスタッフは強制されているわけではない。彼らの健康を守るために(できる限りの措置を講じるのは)わが社の責任だが、彼らは独立したプロで、業務を請け負うかどうかは彼ら自身の判断だ。

――自主隔離の客を受け入れることには批判もあるが。

当初は「コロナに便乗し、人の弱みに付け込んで稼ぐ気か」などと言われたが、すぐにそんな声はなくなった。

「事業を継続するために、やれることは何でもやらなければ」と主張してきたからだ。今では多くの事業者が私たちのやり方をヒントに厳しい状況でも何とか営業を続けようとしている。当初は「危機が終息するまで待つべきだ」とヒステリックに叫ぶ人たちもいたが、失業率が急上昇すると、そういう声も収まった。

――検査を行う医師はどこでキットを手に入れているのか。アメリカでは検査キットの不足が問題になっているが。

医師には政府から支給されている。アメリカに比べ、スイスでは(検査試薬や器具は)さほど不足していない。

――この経験からコロナ後に生かせる教訓を得た?

今の状況は望ましくないが、そのおかげでわが社のビジネスモデルが危機に非常に強いことは分かった。既に投資家から多くの問い合わせが来ている。私も含め、多くの人が未来型の「おもてなし」サービスとして、私たちのモデルが有望だと考えている。

宿泊客はオンラインでチェックインし、オプションで必要なサービスを選べる。大勢の人が泊まる大型ホテルと違って、ここなら自分の家のようなプライべート空間を確保できる。こうした宿泊施設のニーズはコロナ後も伸びるだろうし、危機のさなかでも成長する。


© 2020, Slate


20050519issue_cover_150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年5月19日号(5月12日発売)は「リモートワークの理想と現実」特集。快適性・安全性・効率性を高める方法は? 新型コロナで実現した「理想の働き方」はこのまま一気に普及するのか? 在宅勤務「先進国」アメリカからの最新報告。

[2020年5月 5日号掲載]

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウクライナ大統領と会談 トマホーク供与

ワールド

トランプ氏、中国主席との会談実施を確認 対中100

ワールド

トランプ政権、民主党州で新たにインフレ支出凍結 1

ビジネス

米セントルイス連銀総裁、雇用にリスクなら今月の追加
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「恐ろしい」...キャサリン妃のウェディングドレスに…

  • 3

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    「生で食べればいい」にちょっと待った! 注目のブ…

  • 1

    「恐ろしい」...キャサリン妃のウェディングドレスに…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    やはり「泣かせた」のはキャサリン妃でなく、メーガ…

  • 4

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 5

    メーガン妃はイギリスで、キャサリン妃との関係修復…

  • 1

    やはり「泣かせた」のはキャサリン妃でなく、メーガ…

  • 2

    完全コピーされた、キャサリン妃の「かなり挑発的な…

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 5

    「結婚に反対」だった?...カミラ夫人とエリザベス女…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:日本人と参政党

特集:日本人と参政党

2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る