最新記事

インターネット

こうして悪は栄える──コロナの裏でカネの流れるデマサイト

How Misinformation Pays

2020年04月24日(金)16時35分
ギャビー・ドイチ(ニューズガード記者)

人々の恐怖心に付け込み偽りの希望を与える悪徳サイトが蔓延(写真はイメージ) ljubaphoto-iStock

<怪しい健康関連製品を売ったり、広告料で儲けたり──感染拡大の陰で偽情報サイトにカネが流れている>

奇跡の特効薬などあり得ないと知りつつも、もしかしたら......と思ってしまうのが人情。そこに付け込んで、インチキ薬でがっぽり稼ごうとする悪党がいるのも世の常。新型コロナウイルス感染症の場合も例外ではない。米英仏独伊の5カ国だけで少なくとも160のウェブサイトが、新型コロナウイルスについての偽情報を堂々と掲載し(詳しくはnewsguardtech.comを参照)、言葉巧みに消費者をだまして利益を上げている。

このニューズガード(筆者はそのスタッフ)が把握した限りでも、アメリカでは少なくとも8つのサイトが新型コロナウイルスに有効と称する製品を売り出している。

あるサイトは「ココナツ油が新型コロナウイルスを破壊する」という根拠不明な主張を掲げ、ココナツ油の広告を添えていた。別のサイトでは「コロナ撃退用」の空気清浄機を販売していた。ケルセチンという抗酸化物質が免疫力を強化するとうたい、それを販売するサイトもあった。

根っからの陰謀論者アレックス・ジョーンズが主宰するサイト「インフォウォーズ」は、このチャンスを逃すまいと都市封鎖に備えた備蓄食料を大々的に売り出している。彼は新型コロナウイルスに効くという歯磨き粉などの怪しい健康関連製品も販売し、アマゾンでも全て入手可能だ。

一方、いかにも体に良さそうな名の「ナチュラルニュース・ドット・コム」は54ものドメイン名を使い分け、堂々と虚偽かつ有害な偽情報をばらまき、読者の恐怖心をあおっている。最近の記事では、カリフォルニア州サクラメント郡の当局が故意に新型コロナウイルスを拡散させたと主張していたが、その脇には「軍隊仕様」のマスクを売る広告が出ていた。

ただしEU圏では、ここまで悪質なマーケティング活動はやりにくい。EU規則により、サプリ類の販売業者が提供する健康情報は広く一般に受け入れられた科学的データに基づき、かつ実証されていることが求められる。もちろん新型コロナウイルスに関しては、科学的裏付けのあるサプリなどまだ存在しない。

アルゴリズム広告も加担

しかし、自分でフェイク商品を売らなくても稼ぐ方法はある。今は有力企業が特殊なアルゴリズムを使って無数のサイトの記事を解析し、関連のありそうなところに自動的に広告を出している。だから嘘でも健康記事を載せていれば、広告収入を稼げる。

例を挙げると、NPO米国エイズ協会の広告が、有力保守系サイト「レッドステート・ウオッチャー」のインチキ記事に表示された。ある偽情報サイトに、バックパックの有名ブランドの広告が紛れ込んだこともある。

これぞまさに、インフォデミック(偽情報のパンデミック=世界的拡散)。かくして悪は栄えるのだ。


20200428issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年4月28日号(4月21日発売)は「日本に迫る医療崩壊」特集。コロナ禍の欧州で起きた医療システムの崩壊を、感染者数の急増する日本が避ける方法は? ほか「ポスト・コロナの世界経済はこうなる」など新型コロナ関連記事も多数掲載。

[2020年4月21日号掲載]

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ECB利下げサイクルほぼ終了、夏の間データを検証=

ビジネス

中国5月輸出は3カ月ぶり低水準、関税巡り逆風 輸入

ワールド

「イーロンはミス犯した」、トランプ氏との確執巡りマ

ビジネス

アングル:マイナス金利復活へ追い込まれるスイス中銀
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 3

    なぜメーガン妃の靴は「ぶかぶか」なのか?...理由は…

  • 4

    メーガン・マークル、今度は「抱っこの仕方」に総ツ…

  • 5

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 3

    メーガン・マークル、今度は「抱っこの仕方」に総ツ…

  • 4

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 5

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 3

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:韓国新大統領

特集:韓国新大統領

2025年6月10日号(6/ 3発売)

出直し大統領選を制する李在明。「政策なきポピュリスト」の多難な前途