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ありのままの自分を受け入れる心(セルフコンパッション)と自殺率の関係

2020年01月30日(木)14時30分
松丸さとみ

pixdeluxe-iStock

<米イーストテネシー州立大学の調査で、セルフコンパッションと自殺リスクの関係性と、セルフコンパッションがうつや心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状、怒り、恥、対人欲求の阻害を緩和する効果について調査された......>

短所や失敗をひっくるめて自分を受け入れる「セルフコンパッション」

「セルフコンパッション」という概念がある。これは、一言で説明すると「自分に対する慈しみの気持ち」であり、ありのままの自分の短所や失敗をひっくるめて自分自身を受け入れる、ということだ。もともとは仏教の概念だが、現在は臨床心理学に取り入れられ、セラピーなどに活用されている。

米イーストテネシー州立大学(ETSU)でこのほど行われた調査により、セルフコンパッションが高い人ほど自殺リスクが低いことが明らかになった。自分に対する慈しみの気持ちが強いと、ひどい心理状態にある場合はこれがネガティブに作用しそうだが、調査では、むしろそういうときほどセルフコンパッションと自殺行動において、強い負の相関関係がある(セルフコンパッションが高いと自殺行動が低い)ことが示された。

調査を行ったのは、ETSU心理学部のジェイムソン・K・ヒルシュ教授のチームだ。セルフコンパッションと自殺リスクの関係性と、セルフコンパッションがうつや心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状、怒り、恥、対人欲求の阻害を緩和する効果について調べた。結果は、マインドフルネスに関する最新の研究を掲載する米専門誌『マインドフルネス』に掲載されている。

ヒルシュ教授は調査を行ったきっかけについて、米国、さらには米軍や退役軍人の中で自殺率が上がり続けていることから、自殺防止について関心を抱いたと、心理学や神経科学に関するニュースを扱うウェブメディア「PsyPost」に説明した。

『マインドフルネス』に掲載された今回の調査をまとめた論文によると、米国退役軍人の自殺率は、米国の一般市民の1.5倍に上る。

自分を慈しむ気持ちが強い人ほど自殺リスクは低い

調査の対象となったのは、米国の退役軍人541人(男性69.1%、平均年齢49.90歳)。このうち、少なくとも1度は戦闘地域に就いた経験がある人は、369人(68.2%)に上った。

参加者には、オンライン上で「自殺行動アンケート(改訂版)」や「PTSDチェックリスト(軍隊用)」などのテストのほか、「セルフコンパッション尺度(短縮版)」という、その人のセルフコンパッションの強度を評価するテストも受けてもらった。

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