最新記事

ヘルス

「エピペン」に代わる錠剤投与で食物アレルギー患者を注射器から解放

No More Needles

2019年12月25日(水)17時45分
ニューズウィーク日本版編集部

エピネフリンの微小結晶化に成功。錠剤の投与で注射並みの薬効を実現した(写真はイメージ) Юлия Чернышенко-iStock

<怖いアナフィラキシー・ショックを速攻で治療。保存性と携帯性抜群の錠剤で応急処置が可能になった>

現在、食物アレルギーに苦しんでいる人々は世界で推定2億4000万人に上る。患者はアナフィラキシー(短時間で全身に出る重いアレルギー反応)が起きた場合に備えて、注射器を肌身離さず持ち歩かなければならない。

アナフィラキシーの有効な治療薬はエピネフリンのみ。一刻も早い応急処置が必要だが、現状では「エピペン」と呼ばれる注射器での自己注射以外に方法がなく、子供や注射針が怖い患者にとって障害になっている。そこで薬学者のムタセム・ラワスカラジは「エピペン」に代わる画期的な方法を考案した。エピネフリンの錠剤を投与するのだ。

NW_SAG_02.jpg

ムタセム・ラワスカラジ COURTESY OF MUTASEM RAWAS-QALAJI

新たに開発された錠剤は舌下投与で素早く吸収され、従来の注射器タイプよりも長期間常温保存ができる。おかげで迅速な治療がしやすくなり、多くの患者の命を救えそうだ。

NW_SAG_03.jpg

COURTESY OF MUTASEM RAWAS-QALAJI

開発したラワスカラジに本誌ノア・ミラーが話を聞いた。

――エピネフリンの錠剤は革新的なものか。

そのとおり。アナフィラキシー治療を変えるだろう。

――解決すべき問題とは?

エピネフリンを注射するのを不安に思う患者もいる。再注射の必要がある場合はなおさらだ。一部の患者は常に注射器を携帯しなければならない。注射器はかさばるし、薬液は熱に弱い。自己注射には問題が多い。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トルコ裁判所、最大野党党首巡る判断見送り 10月に

ワールド

中国は戦時文書を「歪曲」、台湾に圧力と米国在台湾協

ビジネス

エヌビディアが独禁法違反、中国当局が指摘 調査継続

ビジネス

無秩序な価格競争抑制し旧式設備の秩序ある撤廃を、習
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    話題の脂肪燃焼トレーニング「HIIT(ヒット)」は、心…

  • 3

    「結婚に反対」だった?...カミラ夫人とエリザベス女…

  • 4

    ハリウッド大注目の映画監督「HIKARI」とは? 「アイ…

  • 5

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 1

    「高慢な態度に失望」...エリザベス女王とヘンリー王…

  • 2

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    やはり「泣かせた」のはキャサリン妃でなく、メーガ…

  • 5

    日本初の「女性首相」は生まれる?...「高く硬いガラ…

  • 1

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 2

    女性の胎内で育てる必要はなくなる? ロボットが胚…

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 5

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:世界が尊敬する日本の小説36

特集:世界が尊敬する日本の小説36

2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは