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都市伝説? クレジットカードの男女差別は本当に存在するのか

Does the Apple Card Discriminate Against Women?

2019年12月19日(木)19時35分
ダイアン・ハリス(本誌米国版エグゼクティブエディター)

「関係者の詳しい情報も審査で何が問題とされたかも分からない以上、まともな結論は導けない。だから性差別と騒がれてしまう」

クレジットカード比較サイト「コンペアカーズ・ドットコム」のマット・シュルツも「貸し手側は審査アルゴリズムを秘密にしている。そこに透明性がないから、消費者にとって納得できない審査結果が出るたびに、カード会社が疑われる」と指摘する。

今回の騒ぎの発端は、ソフトウエア開発会社ベースキャンプの共同創業者デービッド・ハイネマイヤー・ハンソンが、自分のアップルカードの利用限度額は妻名義のカードの20倍だ、これはおかしいとツイートしたことだ。実際には信用スコアは妻のほうが高く、自分たちは「合算で所得税を申告し、(婚姻中に築いた資産は夫婦で折半する)コミュニティープロパティー制度の州に住んでいる」のに、なぜだ?彼はそう訴えた。

カスタマーサービスに問い合わせてもらちが明かず、ハンソンは怒りのツイートを連投した。するとアップルは何も言わずに妻を「VIP待遇」とし、利用限度額を彼と同額に引き上げたという。

この騒ぎにはアップルの共同創業者スティーブ・ウォズニアックも反応した。自分は「銀行口座もクレジットカードも妻と一緒で、資産も全て共有」しているが、なぜか妻の利用限度額は自分の10分の1だと書き込んだ。

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ハンソンに続いて声を上げたウォズニアック夫妻 BRYAN STEFFY/GETTY IMAGES

審査はブラックボックス

騒ぎが大きくなったので、ニューヨーク州金融サービス局もアップルカードの審査基準が州法に抵触するかどうかの調査に乗り出した。局長のリンダ・レースウェルはCNBCの経済番組に出演して、「言われるような差別的ポリシーは許されないので、州当局がその有無を確認する」と述べた。

対するゴールドマン・サックスは、直ちに差別の存在を否定した。審査の過程は人によって異なると前置きした上で、「当社がジェンダーに基づく判断をしたことは一度もないし、今後もない」との声明を出した。

それでも騒ぎは収まらず、SNSには真摯な対応を求める声があふれた。ゴールドマン・サックスに対して「そんな言い方はダメだ。『アルゴリズムに問題はないと信じますが、この深刻な問題は調査します』と言うほうがいい」と意見する投稿もあった。

しかし、大事なことが忘れられているようだ。妻の限度額がもっと高く設定されるべき理由として、ハンソンやウォズニアックが挙げた要因を、カード会社は普通、審査の際に考慮していない。

「税金の申告が夫婦合算かどうかは関係ないし、カード発行を申し込む際に資産総額などを問われることもない」と、シュルツは言う。「ほとんどは申請者の収入、消費傾向、そして過去の信用履歴で決まる。大事なのはその人がせっせと消費してカード会社を儲けさせてくれるかどうか。その人の財産はどうでもいい」

申請者が専業主婦だとか、男性に比べて少ない自分の収入だけを記入した場合は、例え信用履歴がクリーンでも利用限度額はかなり低く設定される可能性があるという。つまり会社側に差別の意図はなくても、結果として女性は差別されやすい。今回の騒ぎでカード会社を批判する人の多くは、そんな審査アルゴリズムにこそ問題があると考えているようだ。

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